薬事ニュース社
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>>>ネットワークの拡大と信頼関係<<<
 一括して診療の経過を管理できる電子カルテや院内での待ち時間を大幅に短縮できる診療予約システムなど、医療分野におけるネットワークの進化が著しい。ネットワークの拡大は、データの一括管理や院内の状況などの情報を閲覧できるだけでなく、今後は離れた場所にいる患者に対して実際に手術ができるようになりそうだ。
 日本初となる手術用ロボット「Da Vinciサージカルシステム」が、9月の医療機器・体外診断薬部会で製造販売承認の了承を得た。同ロボットは、術者が患者の体腔内に挿入した内視鏡を通じて映し出される3次元画像を見ながら能動器具を操作し、術者の手や手首の動きに応じて器具が手術行為を行う医療機器。精密な動きで内視鏡手術が可能なことに加え、ネットワークを整備すれば遠隔操作による手術もできるという。このことからへき地等の医師不足に悩む地域では今後、電子カルテで患者の状態を把握して実際の手術は遠く離れた場所にいる医師が担当するなど、そんな将来がくる可能性もある。
 しかし、実際に手術を受ける患者側はどう感じるだろう。手術時は、同ロボットをサポートするスタッフはいるものの、手術を行っている人間はいない。患者は会ったこともない医師に自身の手術を任せることになり、不安と感じるのではないだろうか。医療の現場では実際に医師と患者が顔を合わせ、コミュニケーション等により信頼関係を築くことも大切。ネットワークの拡大は様々な恩恵をもたらすが、基本的なことを忘れてはいけない。
(2009年10月9日掲載)