薬事ニュース社
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>>>「我田引水」の系譜<<<
 診療報酬マイナス改定の断行で、その後の「医療崩壊」の引き金を引いたとされる小泉政権は当時、「規制緩和」「民間開放」の旗印のもと、医療分野での自由化を推し進めようとした。その急先鋒となったのが、オリックス会長の宮内義彦氏。そして宮内氏を議長に据えた政府の会議の最大の狙いは、「混合診療の解禁」と「株式会社による病院経営の解禁」だった。
この2つの“聖域”をめぐっては厚労省や日医の徹底抗戦もあり、宮内氏の思惑通りには運ばなかったわけだが、そこはしたたかな氏のこと、ちゃっかりPFI方式を活用して合法的に病院経営に参画したのである。PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)とは、「民間資本主導」の言葉通り、公共施設等の建設、維持管理、運営等に関して、自治体が民間の資金や経営ノウハウを取り入れることで、事業コストの削減や効率的なサービス提供を目指す制度。オリックスの関連会社が運営に参画した高知医療センターは、国内で初めてPFI方式を導入した公立病院でもあったことから話題になった。
 ところがその後、同病院の建設等をめぐって汚職事件が発覚。さらに病院事業そのものも、医療材料などのコスト削減が見込み通りに進まなかったことなどから赤字経営が続き、資金繰りが破綻。事業開始からわずか5年でオリックスが経営から手を引くという事態に陥り、強硬な規制緩和論者だった宮内氏の「我田引水商法」は批判を浴びた。
 ところで、当時の宮内氏の会議は「OTC販売の自由化」もターゲットに掲げていた。OTC販売についてはその後、紆余曲折を経て今般、「ネット販売原則全面解禁」へといたるわけだが、今度は薬事法改正案の「処方せん薬」の扱いに関して、楽天の三木谷浩史社長が反発している。その主張の是非はここではおくとして、「政府委員を辞職する」などという強引なやり方は、どうもかつての宮内氏の「我田引水」の姿勢とダブって見えるのだが、果たして国民の理解は得られるのだろうか。
(2013年12月6日掲載)