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>>>濫用等のおそれのある医薬品の行方は<<<
 厚労省は、2月から「医薬品の販売制度に関する検討会」を開き、非処方箋医薬品から一般用医薬品まで広範にわたる制度について議論を重ねている。第2回会合で議題にあがったテーマは「濫用等のおそれのある医薬品」と「要指導医薬品」であったが、時間のほとんどが濫用のおそれのある医薬品に充てられた。その理由は、医薬関係者の想像を超える濫用の実態が報告されたことにある。参考人として出席した嶋根卓也・国立精神 神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部・心理社会研究室長によると、市販薬を主たる薬物とする依存症患者は、2012年と2020年の比較では6倍に急増したほか、全国の精神科医療施設で薬物依存の治療を受けた10代患者の主たる薬物が、一般用医薬品であることが報告された。爆発的な濫用拡大の背景には、SNSによる使用方法の拡散があり、コロナ禍による閉塞感のはけ口をSNSに求め、手軽に入手できる一般薬で実行に移している、ということだ。嶋根氏は、成分の規制強化と薬剤師・登録販売者のゲートキーパー化、教育の充実を指摘。薬物依存の現場感覚としては「麻薬・覚醒剤よりも問題」と明言した。実態報告を受けた検討会委員は一様に「規制の見直し」に賛同。政府の規制改革推進会議に出席する委員も含めて規制強化の合意形成が得られた。しかしながら、実際に区分を引上げる場合、その手続きは簡単ではないだろう。薬機法にはリスク区分に関して「不断の見直し」が記載されているものの、これまでリスク区分が引上げられた事例はない。しかも濫用という不適切使用への対応をどのように制度へ落とし込むのか。かねてから問題視する声は少なくなかったリスク区分の一方通行は、濫用という実態により、リスク引上げの舵が切られることになりそうだ。ただ、制度運用当初から依存問題は懸念されており、濫用のおそれのある医薬品として、アラートを付けたにも関わらず、今回の方向に至ったことについて、販売関係者は強く自省するべきだろう。
(2023年4月21日掲載)