薬事ニュース社
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>>>株価には反映されない企業価値<<<
 業界トップの王子製紙が業界第5位の北越製紙に仕掛けたTOBは、業界第2位の日本製紙をも巻き込んだ三つ巴の様相を呈し、製紙業界のみならず日本の産業界全体を揺るがしている。国内大手企業同士の初めての敵対的買収ということで、「企業再編は新たなステージに突入した」との見方もある。国内需要の頭打ちと、アジアなど海外企業との競争激化を背景とする業界再編圧力は、どの業界にも読み換え可能なコンテクストであり、仁義なき企業買収時代の幕開けとも評される由縁だ。製薬業界にも、こうした「覇権主義」の荒波は及ぶのだろうか。昨年来の統合で誕生した国内トップ企業も、グローバルのスケールに照らし合わせれば未だ「中堅」規模。可能性は十分にありそうだ。
 ところで北越製紙はTOB拒否の理由の1つとして、「企業の独立性が損なわれると、社員の士気が低下する」と主張している。規模の論理に対するアンチ・テーゼだがしかし、株式市場の反応は鈍いようだ。とはいえ、「A社のMRが、統合相手のB社の悪口を言い触らしている」といった、俄かには信じ難いような合併企業の評判を聞くにつけ、異なる文化をもった企業同士が融合することの難しさを感じる。合算売上高や株価といった指標だけで、企業価値を計ることの危うさがそこにはある。規模の拡大が社員の士気の高揚に繋がるケースもあるが、その逆もまた然り。「株価至上主義」の流れが止まらない以上、「覇権主義」の到来も不可避ではあるが、企業を成り立たせる社員の士気やモチベーションまでは、株価から読み取ることはできない。
(2006年8月25日掲載)