薬事ニュース社
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>>>三角合併と顧客幸福(Customer Happiness)<<<
 外国企業が日本に設立した100%子会社を通じ、株式交換で日本企業のM&A(合併買収)を可能とする「三角合併」が、解禁され1カ月余を経た。未だこれといった動きはない。
 国内では、脅威論を払拭するように、直接的な買収防衛策を講ずる企業や、増配する企業も増加。配当に関しては、東証一部上場企業の配当総額が過去最高を記録するなど、株主のハートをつかむという形でのM&A対策も浮き彫りになっている。一方で、三角合併には取締役会や株主総会での賛成、知名度、魅力、株主の外資に対する皮膚感覚の克服など、相応のハードルがあるため、おいそれとはいかないとの楽観的見方もある。
 国内企業の増配が、顧客を向いた企業努力のたまものならば好ましい結果。また外資企業らによるM&Aも、高値売り抜け優先や安易な事業の切り売りなどでなければ、経営改善等で良い面はある。しかし、両者の意識が株主・株価のみに偏りすぎていては問題だろう。
 先頃、コンサルティング企業が、M&Aを経験した国内162社に実施したM&Aに関する実態調査結果を発表。M&Aによる目標達成度を80%以上とし、それを成し遂げた企業ほど「顧客重視」傾向にあるといった結果も明らかにしている。
 サービス業の世界では、顧客満足(CS)より高次の顧客幸福(CH)という概念へ進み、企業の明暗を分ける1つのキーワードになりそうな気配もある。我が業界と同列には論じられないが、M&Aのオフェンス企業だろうと、単独不羈(ふき)のディフェンス企業だろうと、ステークホルダー(※企業活動に関連する利害関係者)のうち「顧客」を軽んじると、これからはますます、M&A目標達成確率やCHトレンドからも遠のく。そうしたこともあるかもしれない。
(2007年6月15日掲載)