薬事ニュース社
オピニオン

>>>「革新的」の意味するところ<<<
 初の黒人大統領誕生に沸く米国だが、民主党政権の医療政策に製薬業界は早くも戦々兢々だ。来日した外資大手のCEOが「オバマ政権が医薬品マージンへの圧力を強めるのは明らかだ」と警戒心を露にすれば、製薬協の庄田隆会長も「価格への関与は強まるだろう。製薬産業には向かい風の状況が起きてくるだろうし、楽観視はしていない」と語っている。米国発の金融不全の影響に、今度は医療政策も加わり、世界最大の医薬品市場の成長性に黄信号が点灯している。
折りしも、「薬価政策」に関しては大先輩の日本では、自由価格の米国並みとは言わないまでも、せめて特許期間中は薬価を維持し、回収した開発コストを次の投資に回せるような仕組みにしてほしいとの業界提案を受け、中医協での議論が進められているが、どうも委員の反応ははかばかしくない。特に「薬価維持特例」は風当たりが強い。
 しかし、論点も見えてきた。過日開催された製薬協主催のシンポジウムで、業界案について厚労省の木下賢志経済課長は、「競合品の少ない分野に特化して開発を行うと、コストも時間も掛かるというのが提案理由と理解している」との趣旨の発言をしている。要するに「革新的医薬品=既存薬と比較して有効性が優れているかどうか」ではなく、「治療満足度の低い領域であるか否か」で定義しよういう行政の思惑が見え隠れする。言い換えれば競合品が存在するかどうか。それならば「薬価を維持する」大義名分も立つ。「維持特例の条件付けが問題」(木下経済課長)とは、「革新的医薬品」をどう定義付けるのかという意味でもあろう。
(2008年12月5日掲載)