薬事ニュース社
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>>>「高額薬剤と薬価」の議論から見る世界戦略<<<
 財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会が小野薬品工業「オプジーボ点滴静注」(一般名=ニボルマブ〈遺伝子組換え〉)を例に、高額な薬剤と国民医療費への影響をテーマに議論し、その後に開かれた日本医師会の会見では中川俊男副会長が、効能追加などにより対象患者数の大幅な増加が見込まれる場合も薬価を引き下げるべきと主張するなど、薬価を巡る議論が活発化している。財務省の担当者は16年度版「骨太の方針」の取りまとめに向け、薬価制度に関する提言は予定していないようだが、「16年度から18年度までの3年間で社会保障費の伸びを1.5兆円程度に抑える」との政府方針が掲げられている以上は、今後も高額薬剤をターゲットとする検討が続けられると考えた方がいいだろう。
 当然のことながら画期的な新薬開発は評価されるべきであり、製薬企業には今後も様々な疾患領域への挑戦が期待される。その一方で医療用医薬品の製造販売による収益が患者負担に加え、保険料や税金で支えられている以上は、伸び続ける医療費に対するコスト意識も求められる。16年度の薬価改定で「特例拡大再算定」が実施された矢先、今度は効能追加時の薬価引き下げまで提案されるというのは決して穏やかな話ではないが、高齢化による医療費の増加は恐らく先進国だけでなく途上国も含め世界中で避けて通れない課題になってくる。つまり高齢化の先頭を走る日本でビジネスモデルを確立することが、今後の世界戦略の鍵になると言えるかもしれない。
(2016年4月22日掲載)