薬事ニュース社
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>>>24年度薬価制度改革<<<
 2024年度薬価制度改革の骨子がまとまった。「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(新薬創出加算)を巡っては、加算率にメリハリを付ける「企業指標」を廃止する一方、新薬の薬価を維持した費用を研究開発投資に活用しているかどうか判断するため、対象企業を選ぶ際の「考え方」として採用した。「企業指標」の廃止に伴い、「新薬創出加算」は改定前薬価を維持するシンプルな制度となり、製薬産業界も「イノベーションの評価・促進という製薬業界の主張を踏まえて頂いた」と評価する。
 このほかにも、薬事制度の「先駆的医薬品」に対応する「先駆加算」に準じた「迅速導入加算」の創設、収載後の外国平均価格調整の引き上げも含めた見直し、薬価改定時に複数の加算が認められた際の「併算定」の実現、市場拡大再算定の該当品目の類似品も引き下げる、いわゆる「共連れ」ルールの改善など、様々なイノベーション評価策が目立つ。議論の場となる中央社会保険医療協議会・薬価専門部会でも「新薬への様々なイノベーション評価を行う内容が示されている」(診療側・長島公之委員)といった意見が相次いだ。
 一方、こうしたイノベーション評価策は、長期収載品の選定療養の導入とセットで実現した。24年10月から施行され、▽後発医薬品の上市後5年以上経過▽後発品への置換え率が50%以上――を対象とし、後発品の最高価格帯との価格差の4分の3を保険給付範囲とする。対象となるのは650成分程度だが、2023年度薬価調査の結果をベースに想定した数値のため、厚生労働省は「薬価調査のたびに変動するが、長期的に見れば対象は増えていく」と説明する。
 創薬力強化とドラッグロス・ラグの解消、製薬産業に対して長期収載品に依存するモデルから高い創薬力を研究開発型のビジネスモデルの転換といったスローガンのもと、24年度薬価制度改革の骨子はまとまった。数々のイノベーション評価策の充実化は製薬産業界にとって追い風となるが、長期収載品の選定療養化に伴い、長期収載品の売上比率が高い企業には逆風となる。24年度薬価制度改革が及ぼす今後の影響に注目が集まる。
(2024年1月19日掲載)