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>>>知ってますよね?「ロボット」の語源<<<
 一向に収束の兆しが見えない福島第一原子力発電所の事故で、国産の災害ロボットが近く投入される見通しだという。作業員の安全などを考慮すればもっと早く検討されてしかるべきだったが、何しろ事故発生当初、原発先進国・フランスからの作業ロボット提供の申し出を、「使用に不慣れだから」というあまりに能天気で笑えない理由により断った東京電力のことだから、まあ大いなる進歩といえるかも知れない。すでに米国のロボットが遠隔操作により建屋内の状況を確認するなど一定の成果を挙げているし、現場の作業員の精神的、肉体的負担軽減の意味からも早期の活躍を期待したい。
 ところで、あまりに有名な話だからご存知の方は多いと思うが、「ロボット」の語源はチェコ語で「労働」を意味する「robota」からの造語で、1920年に発表されたチェコの作家カレル・チャペックの戯曲「R・U・R」(邦題「ロボット」)による。タイトルの「R・U・R」とは「ロッスムのユニバーサル・ロボット社」の略で、作中、ある発明家が生み出したロボットの製造を独占する企業名。人間を労働の苦しみから解放し、人間の労働を肩代わりさせるという理想に基づき開発されたロボットだが、意志をもたないはずの彼らが武装蜂起し、支配者たる人間を滅亡に追い込む……
 と、粗筋を文字にすると、何だか今度の原発事故との類似性に唖然となってしまう。自ら生み出しておきながら、想定外の異変を前にするや、なす術もなく制御不能に陥ってしまう人間の姿は、およそ90年前と少しも変わっていないように見える。人間がつくったものだから手なずけられるという驕りはやっぱり幻想に過ぎなかったんだなあ、などといまは思っていても、根が忘れっぽい人間のこと、大して学ばないんだろうな。まあ、東京で消費する電気のために福島の方々に多大な迷惑をかけている身としてはあまり大きな事もいえないわけだけれど、せめてマメな節電を心がけて罪滅ぼしすることにします。
(2011年5月13日掲載)