薬事ニュース社
オピニオン

>>>みえない苦しみへの理解<<<
 世の中にはまだまだアンメットな領域で苦しんでいる患者が多い。認知度の低い疾患であるため周りから理解を得にくいという希少疾病の患者、あるいは認知度が高い疾患であっても、生活の中での負担や困りごとまでは理解されておらず誤解を受けてしまうという患者。多くの患者、当事者は見えない苦しみと共存している。
 こうした中、製薬企業の「みえない疾患への理解」「多様性への理解」という動きが進んでいる。日本イーライリリーは片頭痛を始めあらゆる健康問題に起因する職場での困難への理解促進に向けた「ヘンズツウ部」を立ち上げ、他企業や自治体らと「みえない多様性PROJECT」を展開している。またアストラゼネカとサノフィはLGBTQIA+に関する合同勉強会を立ち上げ、多様な社員が自分らしく働けるための環境整備に向けた取組みを進めている。ヤンセンファーマは治療中の患者が仕事との両立を図りながら自分らしく働ける社会の実現を目指し、シミュレーションを用いたトレーニングを開発。同パッケージを無償提供するとしている。さらに武田薬品工業は、発達障害を含む脳や神経の違いを「優劣」ではなく「多様性」として尊重し、活かすことで社会をよりよくする「ニューロダイバーシティ」の浸透を図り、当事者の受入れ風土の醸成に繋げることを目的とした産官学連携の「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」を進めている。
 把握していないだけで、もっと多くの取組みがあるだろう。いずれも一歩踏み込んだ内容で、今後の活動に期待がかかる。一方で、重要なのは当事者がどう感じるか。こうしたそれぞれの企業の点と点が、大きな線となって社会を包み、あらゆる当事者の見えない苦しみへの理解が促進することを願う。
(2022年12月9日掲載)