薬事ニュース社
オピニオン

>>>不便さへの寛容性が問われる<<<
 23年の年明けは、電子処方箋の運用開始をきっかけに、医療DXの元年になることが確実視されている。コロナ禍でオンライン診療・服薬指導は急速に広まり、感染流行時における特例的・時限的な措置と並行するかたちでの制度運用下にあるが、現状を踏まえた体制整理がいずれ実施されるはずだ。感染防御の観点から一気に浸透したオンライン診療・服薬指導であるが、治療そのものに必要な物資については、デジタル化が進んでも人の手で運ぶことが中心と言える。この物流問題に関して、立場の違う2者から似たような“予言”的な言葉を耳にした。それは「不便さへの寛容性が問われる」というものだ。ひとりは国内トップクラスのドラッグストア企業の会長。もう一人は医療関係団体の会長。耳にしたタイミングは少々異なるが、その内容はほとんど同じであった。背景にあるのは、急速なデジタル化による情報の先行と、丸2年以上にわたり抜本的な解決に至っていない医薬品流通問題にあるという。さらに追い打ちをかけるのが人口減少社会の到来で、物流の多さに反比例して、配達員不足が常態化している。オンライン診療・服薬指導により、医療者と患者が近づいたことに対し、肝心のモノが数日後に手元に届く状態。このギャップについて、国民の寛容性はどの程度あるのかと両者は指摘するのだ。そもそも論で、「デジタル化」の意味には、技術を活用して過程の効率化を図ることを指す言葉であり、単純なスピードアップだけを意味するものではない。医療DXにより、物流業者の負担が増すだけのものであれば、制度が絵に描いた餅に陥ってしまう恐れがあると言えるだろう。
(2022年12月23日掲載)