薬事ニュース社
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>>>薬剤師がOTC薬を扱う意義<<<
 厚生労働省が公表した調査結果により、薬局・薬剤師が改正薬事法を遵守していないという結果が示された。今回の調査は、厚労省から委託を受けた調査会社の社員が、一般消費者に成り澄まして実態を点検するという、いわゆる"覆面調査"と呼ばれるもの。抜き打ち検査のような形で行われた訳だが、それでも、厚労省は以前から、こうした調査を行うことをアナウンスしており、「準備不足」や「認知不足」などの言い訳は通用しない。日本薬剤師会では、調査結果の要因について明確な答えを出してはいないが、誰の目から見ても、薬局・薬剤師のOTC薬に対する関心が、希薄になってきていることは明らかだ。
 ある薬局経営者は、H2ブロッカーの「ガスター10」を例にあげ、OTC薬を患者・客に販売することの困難さを説明する。「医療用のガスターを処方されたことがある患者さんに対し、値段の高いスイッチOTC薬を販売するのは、薬剤師としても良心が痛む」。また、別の薬剤師は「近隣のドラッグストアでは、当店よりもはるかに安価な価格帯で販売している」と呟く。確かに、薬局経営の観点からすれば、OTC薬を扱うメリットはあまりない。ただでさえ、国が推し進める後発医薬品に力を入れなければならず、在庫負担の問題が常に経営者の頭を悩ましているなか、「売れない」OTC薬を豊富に取り揃え、積極的に販売に乗り出すのには勇気も要るだろう。
 ただ、改正薬事法の根幹をなす情報提供において、"対面販売の原則"を誰よりも強く主張したのは薬局・薬剤師に他ならない。現在、内閣府の規制改革・制度分科会は、OTC薬の通信販売の規制を緩和させようとする動きを見せている。薬局・薬剤師にとっては、OTC薬を扱う意義を再度検証する必要性がありそうだ。
(2010年7月23日掲載)