薬事ニュース社
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>>>ハイチの0次災害<<<
 ハイチが大変なことになった。1月12日に首都のポルトープランスを襲った、M7・0の地震で街が崩壊。2月中旬の時点で、04年のスマトラ沖地震に匹敵する、推定23万人の死者が出ているという。死者数だけを見れば76年の唐山地震など、さらに大規模なケースもあるが、今回のように一国の首都機能が壊滅してしまったケースは珍しい。
 1804年にフランスから独立したハイチは、黒人による初の共和制国家という名誉ある歴史を誇りながらも、独立後は混乱続き。長年、西半球最貧国という不名誉な地位を守り続けている。そんな国の首都に大地震とは神様も酷な真似をするが、ハリケーンと重ならなかったことだけは、不幸中の幸いかもしれない。
 テレビが映し出したポルトープランスの街は、建物が瓦礫に変わったことを除けば、10年ほど前に自分が訪れた時と何も変わっていなかった。つまり、人々の生活に改善の跡は見られなかった。地震直後は、医薬品はおろか水さえも行き渡らない有様だったというが、驚くにはあたらない話だ。そもそも地震という1次災害が起こる前から、この国は政情不安やインフラの不備など、多くの0次災害に苛まれていた。今回の惨劇は2つの災害の相乗効果によるものだろう。ハイチ政府だけを責めても仕方がない話かもしれないが、いずれにせよ、充分な災害対策がなされていたとは考えにくい。
 自然災害にはどれだけ備えてもキリがないが、医業薬業を含む各方面からの充分な備えがなければ、より多くの人が死ぬ。そんな当たり前の現実を突きつけられた、今回の惨事だった。自分が直接言葉を交わした人たちも多数亡くなったのかと考えると、心が痛む。
(2010年2月26日掲載)