薬事ニュース社
オピニオン

>>>パーソナル・ソング<<<
 ドキュメンタリー映画「パーソナル・ソング(原題:Alive Inside)」は、アルツハイマー病の人に対して音楽がどんな力を与えるか、という試みを追った作品だ。主に介護施設で暮らすアルツハイマー病の人に、それぞれの人に合った思い出の曲をイヤフォンで聴いてもらう。すると、昔のことを何も覚えていないと言っていた人が、生き生きとして、若いころの思い出を語りだした。また、別の人は、ステップを踏んで踊りだした。楽しい記憶を呼び覚まし、楽しさや喜びの感覚を取り戻した人の様子を見ると、こちらまでうれしくなった。
 作品の中で、「患者である前に一人の人間であることを忘れてはならない」というメッセージが印象に残った。今まで一人ひとり別の道を生きてきたのだから、思い入れのある音楽もそれぞれ違うだろう。認知症をはじめ、一生付き合っていく病気では、患者と医療者の対話を重視し、その人に合った治療方法を決めることが大切だと聞く。作品には認知症だけではなく、病気のため寝たきりで暮らす男性も登場し、これからどんどん音楽を聴いていこう、と前向きなことを言っていた。
 一人ひとりが自分の好きな音楽を選ぶことは、主体的に生きることの第一歩となりそうだ。
(2014年12月19日掲載)