薬事ニュース社
オピニオン

>>>体内時計も治療のひとつに<<<
 人間の体内時計は、25時間といわれる。しかし、地球の自転周期(1日)はほぼ24時間のため、我々は朝日を浴びて毎日体内時計を1時間修正しており、不規則な生活をしていると体内時計は狂ってしまう。人間の脳内では、体内時計や脳波、脈拍などによる一定のリズムが刻まれ、体内時計を司る視床下部視交叉上核が全身の活動力を高める働きをする交感神経に信号を送り、朝になると目が覚め、夜になると眠くなるなど1日のリズムにメリハリをつけている。
 1日のリズムのメリハリには血圧も関係しており、血圧が最も低くなるのは睡眠中で、日中と比べると40mmHg程度下がる事もある。また、横になったり、30分休憩するだけでも血圧は15~20mmHg下がる。これだけ時間によって血圧が変動するのなら、高血圧治療には薬剤を服用する時間にも考慮が必要ではないだろうか。ACE阻害薬を午前2時に投与した場合は、午後2時の投与に比べて降圧効果が高く、持続時間も長いとの試験結果もある。
 また、睡眠時には血管の修復が進むため、高血圧患者にとっては良質な睡眠も大切だ。良質な睡眠を得るためには、睡眠を司るホルモンのメラトニンが適切に分泌されることが重要で、メラトニンを適切に分泌するには体内時計と交感神経の良好な関係が必要となる。
 これらのことから今後、薬剤の添付文書には「胃粘膜の保護のため、食後に服用すること」などの用法のほか、「可能なら血圧の下がる夜間に服用すること」などの推奨服用時刻や「体内時計正常化のため、毎日朝日を浴びること」などの注意事項が記載されるかもしれない。
(2008年11月28日掲載)