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>>>「ゾコーバ」と特例再算定<<<
 塩野義製薬の経口新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠125㎎」(一般名:エンシトレルビル フマル酸)が3月15日に薬価収載された。薬価は1錠7407.40円、1治療薬価は5万1851.80円。中央社会保険医療協議会では今年に入ってから、数回にわたって「ゾコーバ」の薬価上の対応方針を議論。コロナという感染症の特性を踏まえ、通常とは異なる薬価算定や市場拡大再算定の方法を特別に検討してきた。
 具体的には類似薬効比較方式Ⅰで算定し、経口コロナ薬「ラゲブリオカプセル」と抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ錠20㎎」を比較薬に選び、2剤の1治療薬価の平均値を薬価に設定した。急激な市場拡大による医療保険財政への影響も考慮し、巨額な医薬品の薬価を最大で半額にする「特例拡大再算定」の「特例」も設けた。コロナの感染状況や投与割合、出荷量などの情報に基づいて市場規模を推計。こうした推計データに基づき、実際の年間販売額が企業の予想販売額から10倍以上に急拡大し、かつ3000億円を超えた場合に限り、引き下げ率を現行ルールの上限値である50%から66.7%に引き上げる措置も講じた。
 企業が提示するピーク時の予測市場規模は販売後2年度目に192億円(患者数37万人)。コロナ陽性者数について、「第7波」までの実績をベースに1つの波当たりの期間を5カ月とし、「第8波」の陽性者数推計が1200万人である点を踏まえ、「第9波」以降も同数の陽性者数が発生すると推計。その上で陽性者のうち、「ゾコーバ」の対象となる潜在的な投与患者数を推計しつつ、1月16日時点で約0.2%という投与割合も考慮し、一般流通すれば1%上乗せされるとして、全陽性者の約1.2%に「ゾコーバ」が投与されるとの試算で市場規模を予測した。
 1治療薬価5万1851.80円という数字を巡って、支払側委員からは「かなり高い印象」との声も聞かれるが、実際に「ゾコーバ」の投与が急増し、市場が急拡大して「特例拡大再算定」の「特例」が適用されるかどうかは懐疑的な見方が強い。「ゾコーバ」はガイドラインで、重症化リスク因子のない軽症者への投与を慎重に検討するよう促しており、処方の検討対象には「高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある人」と記載している。厚労省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は中医協の会合で「万が一のケースが生じた際の措置として、引き下げ率の上限値引き上げが適当と考えた」と説明していた。
(2023年3月24日掲載)