薬事ニュース社
オピニオン

>>>首長のワクチン接種<<<
 全国の自治体で首長が、住民より優先して新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたとして、批判の声が上がっている。個人的には、首長が感染対策の陣頭指揮を執るわけだから、真っ先にワクチン接種をするべきだと思う。首長が感染すれば、ワクチン供給や感染防止対策に大きな支障をきたすわけで、結局は住民が不利益を被るわけだ。同様の理由で、自治体の職員や警官、消防士なども優先接種するべきだろう。この点に関して、一定の合理性があることは間違いない。
 しかし今回、首長の優先接種が批判される事態となっている。公平性の観点に加え、ワクチンの予約システムの機能不全など、行政への不満がたまっていたのだろうと思う。また、優先接種することを事前に説明しなかったことや、首長側が自らを「医療従事者」「高齢者」と説明し、正当化したことにも問題があったと感じる。事前に丁寧な説明を行い、マニュアルなどを公表していれば、批判されることもなかっただろう。
 そしてもう一点、この騒動で感じたことは、公務員を優先することを嫌悪する層が一定程度いることで、行政の感染症対策が後手後手になってしまっていることに起因していると思う。しかし行政側のマンパワー不足は明白で、こういった状況になっているのはある程度しかたない面がある。そもそもマンパワー不足の原因は、国民が公務員を減らせと大合唱したせいでもあり、この緊急時でそのツケが回ってきたよう思える。今回の首長のワクチン接種騒動は、ある意味行政のありかたを再考する良い機会ではないだろうか。
(2021年5月21日掲載)