薬事ニュース社
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>>>がんゲノム医療の幕開けとなった2019年<<<
 日本のがん医療の歴史において、もっとも大きいといって差し支えない変革だ――。今年6月に「がん遺伝子パネル」が国民皆保険の下でスタートしたことを受け、国立がん研究センターの間野博行理事は声を強めた。都内で開かれたシンポジウムでの一幕だ。
 「がん遺伝子パネル」は、次世代シークエンサーを用いて複数のがん遺伝子の変異を解析する機器。がん特有の遺伝子変異を分析することで、より効果的と考えられる薬剤を選択し、それぞれのがん患者に対する個別治療が可能となる。現在は「標準治療がない固形がん患者」や「局所進行もしくは転移が認められる標準治療が終了となった固形がん患者」が保険適用の対象だ。
 もちろんすべての患者に適切な治療法が見つかるわけではない。そのため、国立がん研究センターでは10月より、遺伝子変異が見つかったものの、治療に結びつかない患者に対し、既承認薬を適応外使用してその治療効果を検討する臨床研究を始めている。
 12月には、厚生労働省が「がん遺伝子パネル検査」のスタートから半年間における実態把握調査の結果を発表した。検査を実施した805件のうち、治療に結びついた患者数は88人だった。「わずか1割」という見方もできるが、「標準治療のない1割の患者を治療につなげることができた」というのは大きな進歩だ。
 2019年はまさにがんゲノム医療の幕開けとなる1年だった。医療のたゆまぬ進歩に期待を馳せて、今年を締めくくりたい。
(2019年12月20日掲載)