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>>>伸び悩むHPVワクチン接種<<<
 2022年より積極的勧奨が再開されたHPVワクチンであるが、この接種率の向上が芳しくない。先ほど開かれた厚科審・薬食審の合同部会において、大阪大学の上田豊講師から「HPVワクチンの接種状況に関する検討」と題する報告が行われた。それによると接種可能年齢である12歳における初回の累積接種はわずか2.8%に留まり、13歳で8.1%、14歳で12.9%とようやく2桁に到達し、その後は年齢が上昇するごとに高くなっている。しかしながら、積極的勧奨が中止された世代へのキャッチアップ接種となると、20歳、21歳でいずれも9%台に留まり、世代間のバラつきが目立つ。同講師は「積極的勧奨再開前から徐々に上昇しているものの、定期接種、キャッチアップ接種とも、緊急促進事業当時ほどには接種が拡がっていない」と総括するとともに、「標準接種年齢である13歳になる年度での接種率が低く、今後、この年齢でのより積極的な接種が望まれる」と言及した。世界保健機関は2030年までに全世界で15歳までに90%の女性が接種することなどを目標に掲げている。既にカナダは約9割、オーストラリアやイギリスでは約8割、アメリカでは男女ともに6割で、日本はグローバルな視点で大きく遅れをとっている状況だ。会合では、対象者とその保護者を含めた広報の重要性が指摘されるなど、より一層の啓発活動を行うことを確認した。既に厚労省は自治体を通じて対象年齢のいる家庭に対してリーフレットを配布しているほか、SNSを通じて啓発活動に乗り出している。ただ、厚労省の調査では依然として対象年齢の3割がHPVワクチンを「知らない」と回答。広報と対象者における知名度にギャップが滲むのが現状だ。最終的な接種は自己決定が重要であることは言うまでもないが、昨今のワクチンに対するSNS等には、エビデンスとはほど遠い陰謀論等、目を疑うような情報も飛び交う。知識不足や偏った情報でその判断が鈍るような状況は避けたいところだ。
(2024年2月9日掲載)