薬事ニュース社
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>>>医薬分業進化論<<<
 文字のはじまりは、事象を単純化して写し取ることで意味を伝えた象形文字と言われる。それが長い年月をかけてローマ字や漢字などに変容し、本邦では平仮名、片仮名が生れた。が、昨今では電脳文化から顔文字や絵文字が発生し、ケータイメールのように、単純な絵や記号だけで意思疎通も可能な世界が現出するようになった。「これもある意味“先祖がえり”だな」と感じるときがある。 
 「これも――」というのは、“先祖がえり”を、実は医薬分業でも感じていたからだ。院外発行していた処方せんを院内に戻すという最近の北陸での事例が、特にその思いを惹起させた。医薬分業の先祖がえりは、「分業の理想」が「患者の利便性」や「病院経営上の都合」を超えないと判断された時、よく表出する話題ではある。これまでにもいくつかの地域で話題になった。まあ、理由はどうあれ、長年かけて院内→門前・マンツーマン分業→面分業(途上)と広がってきた処方せんを、ここにきて院内に戻すという話であれば、分業の先祖がえりとの思いは否めない。ただ、これとは別に、高齢患者の利便性を踏まえ、調剤薬局が院内で開業できるように、と規制緩和を求める形での“処方せん院内回帰論”も出てきた。財務大臣の諮問機関・財政制度等審議会で病院経営者から要望されたものだ。古いようで新しい要望であり、先祖がえりのような進化のような要望でもある。
 進化のような先祖がえりという観点からいえば、ケータイ文字もただの先祖がえりではなく、最近は「デコメール」用の動く絵文字などに進化している。分業の場合も、もし、院内に誘致した調剤薬局で処方せんを処理するなどということが認められれば、進化なのか、先祖がえりなのかわからないことになる。それをダーウィン的に分析すると……うむ、わからない。
(2009年6月5日掲載)