薬事ニュース社
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>>>製薬産業「新・進化論」<<<
 存在すら忘れかけていた「医薬品産業ビジョン」の改訂版が6月に発表された。製薬企業を「メガファーマ」「スペシャリティファーマ」などと類型化し、規模の拡大や再編の必要性を打ち出した厚労省による「産業政策」の2013年バージョンである。
 いまさら感が漂うのも事実だが、しかし、これがそう見くびったものでもない。何しろ副題からして凄い。「創薬環境の国家間競争を勝ち抜くために、次元の違う取組みを」。まさしく、これまでとは次元が違う。そして導き出した結論もなかなかのものだ。いわく、「前回までのビジョンで示したファーマ類型を超えて、『勝ちパターンのビジネスモデル』を自ら作り上げる時代に入る」「状況に適した企業が生き残る『適者生存』という形になる」と総括しているのである。ダーウィンでもあるまいに、「適者生存」など言わずもがな、そもそも企業経営に厚労省が口出しすることに無理があったのだ、などなどの批判はごもっとも。しかし、自ら提示した「ファーマ類型」を、いわば自己否定してまで打ち出した新たな将来展望は、それなりにいいところを突いてもいる。実際、とある中堅メーカー幹部は「本当に中小メーカーが求められるのはむしろこれから」と力説する。「メガファーマは一定の売上、たとえば100億円以上が見込めない製品は、どれだけいい製品でもどんどん導出する」。そういう案件が「結構、持ち込まれる」のだという。アンメット領域にまで開発の手を広げてみたけれど、メガファーマはやはり採算重視だから、患者数の少ない領域を担うのは中小メーカーの役目だと言いたいのだろう。結局、日本には日本なりの製薬産業の進化の形というのがあるのかもしれない。
 と、まあ結構、経済課を持ち上げてみたが、実は「メガファーマとか言ってみたけど、でかけりゃいいってものでもないし、もうさっぱりわからん」と匙を投げただけというのが真相かも。「適者生存」は、最近、すっかり影が薄いとの評がもっぱらの経済課の自虐ネタという陰口も聞こえてきそうだが!?
(2013年7月19日掲載)