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>>>「健康サポート薬局」の基本的理念<<<
 「健康サポート薬局と調剤報酬は関係ない」――。日本薬剤師会は「健康サポート薬局」の基準の再周知と適正な運用を図るために発出した通知の中で、このような一文を盛り込んだ。「健康サポート薬局」が将来的に何らかのかたちで調剤報酬に組み込まれるとの思惑から、10月1日からの本格開始を目前に一部の地域で、基準要件の1つである「研修」の受講に薬剤師が殺到したためだ。日薬幹部は「健康サポート薬局の基本的な理念を理解した上で取組んでほしい」と嘆く。
 「健康サポート薬局」として認定を受けるためには、5年以上の実務経験を前提とし、患者・生活者からの主訴の対応や多職種連携の推進を目的とした「技能習得型研修」と、要指導医薬品・OTC薬に関する知識などの習得を目指す「知識習得型研修」の2つの研修を修了した薬剤師の常駐(常勤・非常勤などの雇用形態は問わず)が必須となる。
 日薬は研修実施機関として準備を進め、都道府県薬剤師会と連携して研修を行っているが、複数の研修会では当初の想定を大幅に超える受講者が殺到し、一部の会員が受講できない事例が続出。ある日薬関係者は「勤務薬剤師の中には、とりあえず先に研修を受講しておけば、将来的に転職などで有利に働くと考えている方も、少なからず見受けられる」と話す。
 「健康サポート薬局」制度を巡っては、医薬分業自体に厳しい目が向けられたなかで薬局・薬剤師のあるべき姿について検討した結果、地域包括ケアシステムの中で多職種と連携し、地域住民の相談役の1つとしての役割を果たすという理念のもと、制度設計に辿りついた経緯がある。こうした背景も踏まえて現場の薬局・薬剤師には、「点数が付く、付かない」という判断で対応するのではなく、制度の信頼性を損なわないような取組みを期待したい。
(2016年8月26日掲載)