薬事ニュース社
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>>>“とりあえず”スタートした電子処方箋の仕組み<<<
 本年1月26日から全国で運用開始となった電子処方箋の仕組みであるが、2月5日時点での対応している医療機関・薬局は277件に留まっており、率直に言って大変レアな稼働状況となっている。そもそも論、現場の医療機関・薬局関係者からは「なぜ今なのか」という声は少なくない。新型コロナウイルス感染症は、年に複数回のピークを迎える特性を持ち、ピークアウトした状態であっても医療機関等は、ピーク時にたまった雑務や従業員の休暇等にまとめて対応しているのが実情であり、とても新しいことを積極的にはじめようとする機運にはない。既に仕組み対応している薬局チェーンの幹部は、「モデル事業も同時に動いており、その検証を待ってから対応を考えている企業もいる」と話す。こうした状況に加えて「何より診療所などの取組みが限定的で、薬局側だけではどうしようもない」と言葉を続ける。ある地方の医師会関係者は「高齢の医師の中には、電子処方箋の仕組みはおろか、マイナンバーカードの健康保険証利用に対応することに腰が重い」と打ち明ける。厚生労働省医政局参事官の田中彰子氏(特定医薬品開発支援・医療情報担当)は専門紙の共同インタビューの中で、「もう少し準備期間があった方がいいという気持ちは私自身もある」とコメントしており、駆け足な仕組みの稼働であることを否定しない。また、仕組みの浸透等に関する今後のスケジュール感も提示されていない。笛吹けども踊らず、そんな言葉がチラついてしまうのが電子処方箋の仕組みの現在地だ。
(2023年2月20日掲載)