薬事ニュース社
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>>>輝く人を認める社会に<<<
 糖尿病療養指導に貢献した個人・団体に贈られる「糖尿病療養指導鈴木万平賞」受賞者の一人、大森安恵さんの受賞コメントは印象的だった。大森さんは、1960年代から、糖尿病のある人の妊娠・出産への道を確立したことが評価された。大森さんによると、欧米ではインスリンが発見されて以降、糖尿病患者の出産の道は開かれていたが、日本では「糖尿病の人は妊娠してはならないという不文律があった」という。自身にも死産の経験があり、悲しみの共有から「欧米で行われていることを日本でも確立しよう」という思いに至ったそうだ。「糖尿病があっても妊娠できる」というキャッチフレーズは「男性医師よりもむしろ一般の人に先に普及した」といい、学会の賞に推薦されたこともあったが、「アメリカのまねだと言われ、この分野を確立したことは全く認めてもらえなかった」と振り返った。
 近頃、女性が輝く社会を実現する、という風潮になんとなく違和感があったが、大森さんの話を聞いて確信した。女性が輝いていないのではなく、すでに活躍している人たちを認めるという姿勢が必要なのだと思う。この微妙なずれが実は大事なのではと思う。立場や肩書によらず、男女とも、輝いている人はいるはずだ。
 自身の活動において「難所はありませんでした」と言い切った大森さんの目は輝いていた。
(2014年11月7日掲載)