薬事ニュース社
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>>>菅首相と中間年改定<<<
 「まさか所信表明演説で発言するとは思わなかった」――。10月26日に召集された臨時国会での菅義偉首相の所信表明演説を巡り、複数の薬系技官はこのように呟いた。「各制度の非効率や不公平は正していく」とした上で、「毎年薬価改定の実現に取組む」と発言したことだ。所信表明演説で「薬価改定」の単語が出たところに、厚労省内では「薬剤費抑制に対する菅首相の強い思い入れが見える」との声も聞かれる。
 免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」に端を発した、いわゆる「高額薬剤」問題でも、前安倍政権下で菅首相は薬価引き下げに前のめりの姿勢をみせていた。官房長官時代から毎年薬価改定・調査の必要性を指摘してきた菅首相だけに、もはや「中間年改定」の実施自体は避けられそうにない情勢だ。当初は実施自体に反対を唱えていた医療界・製薬業界のトーンも変わりつつある。自民党時代には慎重論を展開していた田村憲久厚生労働大臣も「大臣合意があるので実施する」と話す。
 一方、議論の場となる中央社会保険医療協議会・薬価専門部会は7月以降、11月に入った現時点でもまだ開かれていない。焦点となる「中間年改定」の対象範囲を巡り、財務省は「先発医薬品も幅広く対象品目に含めるべき」として全品目改定を視野に提言するなど、早くも牽制球を投げている。ある自民党議員は「厚労省は首相へのレクがなかなか進んでおらず、調整に難航しているようだ」と話す。中医協自体は12月に週2回ペースでの審議に入り、「中間年改定」の議論を集中的に行う見通しだ。
(2020年11月13日掲載)