薬事ニュース社
オピニオン

>>>蛇が焼ければインフルが流行る?<<<
 ブラジルのサンパウロにあるブタンタン研究所は、約8万5千点の蛇の標本を収集する世界最大の「毒蛇研究所」で、一風変わった観光名所としてもその名を知られてきた。流石は国土の大部分が熱帯に属する国だけに、蛇以外にも約45万点に上るクモやサソリの標本が収集され、その研究結果は血清等の研究に大きく貢献してきたという。
 既に先々月の話になるが、そんな研究所の爬虫類保管庫で火災が発生し、実に12時間も燃え続けた結果、120年程前から収集されてきたデータがほぼ全て消失したという。現地報道によれば、研究所には火災予防等の設備は無きに等しかったとのことで、所長は「人類にとって大きな損失」と嘆いているそうだが、何ともあっけない話だ。
 さて、ことは蛇の話だけに終わらない。同研究所は国内で使用されるワクチンの約90%を作っていただけでなく、昨年からは国連や政府から要請を受け、新型インフルエンザA型(H1N1)ワクチンについても、生産を請け負っていたという。新興・後発国向けにワクチン製造の協同体制を構築したい国連、そしてそれ以上に当のブラジルにとって、今回の事故が大打撃になったのは間違いないだろう。こうなると話の規模は俄然大きくなる。
 そんな古いニュースを思い出したのは、厚労省が6日、新型ワクチンの開発・生産体制の構築に関し、施設整備等で6社に交付金を支給することを発表したからだった。日本で同様の事故が起こる可能性があるかどうかはさておき、大きなミッションを頓挫させるきっかけはウイルス同様、やはりどんなところに潜んでいるか分からない。そしてインフルと同様に、発生してからでは後処理が大変だ。
(2010年7月16日掲載)