薬事ニュース社
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>>> "覆面調査"が規制反対派に与えた追い風<<<
「何をやっているのかね」――。新たに医薬食品局長に就任した間杉純氏は専門紙記者団の共同取材で、改めて薬剤師に苦言を呈した。厚生労働省がOTC薬の新販売制度の定着状況を調べた"覆面調査"。その結果、半数以上の店舗で改正薬事法に即した対応が採られておらず、かつ、その大半が個人経営の薬局であることが明らかとなった。法の施行に向けて厚労省と日本薬剤師会はともに、"対面販売の原則"の維持に腐心してきた。それだけに、厚労省にとっては「裏切られた」という思いがあったのかもしれない。事実、間杉局長をはじめ、厚労省幹部の日薬に対する発言は厳しさを増してきている。
 元々、厚労省が実施した"覆面調査"自体は1月~3月上旬にかけて行われており、本来であれば3月中には発表できていたはずだった。しかし実際に調査結果が公表されたのは6月18日。この"タイムラグ"に関しては、様々な憶測が聞かれるが、内閣府・行政刷新会議の「規制・制度改革に関する分科会」との関係を指摘する見方が最も強い。
 同分科会が医療・医薬品などに関する17の規制改革事項と対処方針について、第一次報告書案を取りまとめたのが6月7日。このうち、OTC薬の通信販売規制に関しては当初、内閣府と厚労省・政務三役の間で、「対面販売の原則を維持する」との文言を報告書案に盛り込むことで合意していた。しかし、"対面販売の原則"に否定的な分科会の委員も少なくなく、最終的には意見合意に至らずに継続審議扱いとなった。もしも、この間に厚労省が調査結果を公表していれば、報告書の内容も変わっていたかもしれない。
 分科会に関しては今秋にも再開が予定されている。継続扱いとなったOTC薬の通信販売規制に係る審議では、当然、規制反対派の委員が"覆面調査"の結果を議論の材料として持ち出してくるだろう。厚労省と日薬にとっては厳しい戦いとなりそうだ。
(2010年9月10日掲載)