薬事ニュース社
オピニオン

>>>痛みの重要性<<<
 日本整形外科学会主催のがんとロコモをテーマにした講演で、がんと運動器の関係について2つの指摘を聞いた。1つは骨転移の痛みや抗がん剤の副作用による痛みなどに対して適切な対処が重要だという指摘。もう1つは、運動器疾患をがんと併発している可能性があるという指摘だ。
 一般的にがんは中高年になると患者数が増加する。それは運動器疾患をわずらう年齢層とも重なる。例えばがんの痛みに対しオピオイドを使用していた女性患者は、痛みの原因が脊柱管狭窄症による神経症状だということが判明し、神経ブロックを使うことで痛みが改善しオピオイドも減量できたという。また、頸椎への骨転移の診断を受けた男性患者は整形外科にて頚椎症であると診断がつき、積極的な治療を検討できることになった。「がんの痛み」なのか、「がん以外の痛み」なのか正しく診断し、適切な治療に導くことが整形外科医に求められる、ということだった。
 一般の人にとっても運動器の慢性疼痛への対処は後回しにされがちだという話を聞いたことがある。近年、新しい抗がん剤が開発され、治療選択肢が増えてきているものの、身体状態が良くなければ使うことができない。適切な対処をすることで、ひいてはがんの治療にも良い影響をもたらす可能性もあるのだから、「痛み」への認識がますます高まることを期待したい。
(2018年9月28日掲載)