薬事ニュース社
オピニオン

>>>雇用問題――患者の場合<<<
 先日、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の患者会の話を聞く機会があった。その際、「今、どのような政策が必要か」との問いに、「就労支援」との答えが返ってきた。クローン病や潰瘍性大腸炎は特定疾患に指定されている難病だ。新薬や治療法の研究支援といった、こちらが予想していた答えとは違う答えに驚く一方で、納得した。
 クローン病や潰瘍性大腸炎の患者は、比較的世代が若い。また、症状が消失(緩解)している間は、仕事はもちろん、健康な人と変わらない生活を送ることが出来る。社会参加の意欲が高いのは、良く理解できる。ただ、再燃すると、症状が重い場合は仕事をすることが難しく、長期休業を余儀なくされることもあり、就労の継続の壁になっているという。
 がん患者に関しても、4人に3人は「今の仕事を続けたい」と希望しているが、実際には、3人に1人が診断後に転職をしているとの調査結果もあり、疾患を抱えて働く人たちの厳しい就労環境が浮き彫りとなっている。
 東京大学医療政策人材養成講座4期生の桜井なおみ氏らのグループは、長期通院治療が必要な疾患については、「有給休暇以外に通院時間を有給認定にする等、①柔軟な就労体制の導入、②働く権利を守る法制度と支援制度、③再雇用を包括した「治療休暇制度」を確立し、今の仕事を継続できるよう社会全体で担保していく必要がある」と提言している。ノーマライゼーションの観点からすると、重要な指摘だと思う。
 年末来、景気の悪化、雇用が日本経済の問題としてクローズアップされているが、雇用の中にも様々な問題があることを教えられた。
(2009年2月27日掲載)