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>>>緊急避妊薬のスイッチOTC化<<<
 厚生労働省は5月12日の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」に、緊急避妊薬のスイッチOTC化に関して募集したパブリックコメントの結果を報告した。4万6312件の意見が集まり、このうちスイッチOTC化について「賛成」とする意見は4万5314件と大多数を占めた。パブコメの募集は昨年12月27日から1月31日にかけて実施。2017年に行ったパブコメ募集には348件の意見が提出され、「賛成」が320件、「反対」は28件だった。緊急避妊薬のスイッチ化に対する国民・社会の関心は大きく高まっている。
 緊急避妊薬のスイッチ化に関する議論は長らく停滞してきた。17年7月の評価検討会議では、委員から悪用・乱用を懸念する声があがったほか、薬剤師が供給する上で必要な研修が行われていないといった指摘もあり、「時期尚早」として見送られた経緯がある。その後は男女共同参画社会の形成促進に向けた機運が高まり、「骨太方針2021」には、処方箋が無くても緊急避妊薬を薬局で販売できるように、21年度中に検討を開始する方針が示された。政府方針を受けて厚労省も21年10月に、評価検討会議での緊急避妊薬のスイッチ化に関する議論を再開させた。それでも審議はスムーズに進展せず、再びパブリックコメントを募集する流れとなっていた。
 パブコメの結果を受けて5月12日の会合では一部の委員から、取り扱う薬局などを限定した形での「試験的運用」を提案する声があがり、これに複数の委員が賛同した。厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課の吉田易範課長も「試験的運用が可能かどうかを次回会合までに検討したい」と対応した。ただ、評価検討会議は20年に体制を一新し、スイッチ化に向けた課題と対応策の整理だけを行い、それをベースに薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会で可否を判断することとなった。「試験的運用」の実現可能性も含め、緊急避妊薬のスイッチ化に向けては未だに不透明な情勢にある。
(2023年5月26日掲載)