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>>>ノーベル賞の次は<<<
 慈善財団『ビル&メリンダ・ゲイツ財団』は10月22日、世界22カ国からエントリーした約4000件の研究のうち、「世界規模で健康状態を改善させる革新的なアイデア」と判断した104件に対し、各10万ドルの助成を行うと発表した。
 同財団は、米マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏が、2000年に夫人と創設した世界最大の慈善基金財団。ゲイツ氏は今夏に経営の第一線から退き、活動の軸足を同財団に移しているが、今回の発表はその財団初の健康関連助成事業として注目される。
 さて、今回選出された104件だが、その研究分野は「ワクチン」「研究ツール」「代替治療」「新しい仮説」等と多岐に亘る。が、最も多かったのはやはり「医薬品」で、全体の約8割を占める。研究テーマは、薬剤耐性の制御、HIV感染の新たな予防・治療法、結核・マラリア等伝染病予防など様々。一方、主任研究者を国別でみると米国が圧倒的に多いが、日本も東京大学、大阪大学、自治医科大学から選出された。その中で、ユニークさで目を引くのが、自治医大・松岡裕之教授の研究。『世間一般の通念にチャレンジする仮説の研究』と同財団が評するその研究テーマは、「通常、病気を媒介する蚊の卵核中に新たなDNAを導入し、それらが人を刺すときにワクチンを注入する『飛んでいる注射器』とする」という、まるでSF映画ばりだ。
 過日、今年のノーベル化学賞に下村脩氏が受賞し、薬学出身初のノーベル賞の受賞者が誕生した。こちらは権威と歴史ある賞だが、一方で風変わりな研究を評価するイグノーベル賞がある。叱責を恐れずに言うならば、同財団の助成事業はその間に位置するかもしれない。
 同財団では今後も革新的なアイデアを求めているようなので、我こそはと思う方はチェックしてみては。
(2008年10月31日掲載)