薬事ニュース社
オピニオン

>>>物価高騰の影響はここにも<<<
 過日開催された「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では、薬価に対する製造原価率が80%を超え、実質的に不採算となっている後発医薬品の品目数が1632品目で全体の3割を占める実態が明らかになった。また、後発品だけではなく、「安定確保医薬品」や「基礎的医薬品」など安定供給上の必要性が高い医薬品でも、94社696品目が、物価高騰や為替変動の影響などで不採算となっているとの調査結果も示された。
 さらに中医協・薬価専門部会で行われた意見聴取で日薬連の眞鍋淳会長は、原材料費やエネルギーなどの製造原価が高騰しているなか、「医薬品は一般的な消費財とは異なり、製造過程での効率化や製品への価格転嫁、製造・供給量の調整といった対策を柔軟に行うことができない」と指摘。その上で「直近の原油価格の高騰や円安の進行は医薬品の製造コストに多大な影響を与えており、特に低薬価品では原価率が著しく悪化している」と述べ、中間年薬価改定に反対する考えを示したほか、1973年のオイルショックに伴い、医薬品の安定供給に支障が生じるおそれがあったことから薬価を引き上げた緊急対策を引き合いに出し、「原価率が悪化している品目については、中間年改定とは別に薬価を引き上げる措置を実施すべき」などと要請した。製薬協の岡田安史会長も、「直近の原材料などの高騰や円安の進行は、新薬企業にとっても研究開発や生産で非常に大きな影響を及ぼしている」とし、「特許期間中の新薬は中間年改定の対象にすべきではない」との認識を示している。
 ただ、こうした意見に対しては、支払い側だけではなく診療側委員も異論を唱えている。政府は物価高騰への対応策等をまとめた総合経済対策で、値上がりが続くガス・電気料金の負担軽減策を盛り込んだが、窮状を訴える製薬産業界の声にも耳を貸すのか、年末の予算編成に向けた議論はいよいよ佳境を迎える。
(2022年11月11日掲載)