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>>>厚労省の辞書にイノベーションの文字はあるか?<<<
 広辞苑の第六版が来年1月に発売される。約9年ぶりの全面改訂である。新規に1万項目を追加して総収録項目数は24万にもなるそうだ。さて、晴れて広辞苑デビューを果たす新規項目一覧を眺めていると、世相の変化が垣間見えてなかなかに興味深い。「いけ面」「癒し系」「逆切れ」「クレーマー」などの新語も、これで日本語としてのお墨付きを頂いたということか。「グローバリゼーション」が今回初登場というのはちょっと意外だが、「敵対的企業買収」などは日本の経営者にとって目にしたくない文字の筆頭ではあろう。
 医療に関連深い項目としては、「メタボリック症候群」などと並び、「OTC薬」と「ジェネリック医薬品」がラインナップされた。OTC薬の方は、大衆薬協が一般用医薬品の呼称を「OTC薬」に統一することを過日発表したばかりで、OTC振興の願ってもない援軍となりそうだ。片やジェネリック医薬品は、政府挙げての後押しが奏効したか。後発品の文字を目にしない日はないくらい、いまや政府の医療費抑制策の堂々たる主役であり、広辞苑登場も順当なところ。
 ところで、後発品ばかりがもてはやされる昨今、それとセットで語られていたはずの「イノベーション」の言葉をとんと耳にしなくなった。08年度薬価改定も然り。「技術革新の評価」と「売れたら下げる」ことが、どうすれば両立するのか、一度、厚労省の辞書を覗いてみたいものだ。もっとも、「お役所用語」が羅列された辞書など常人に理解できるはずもないが。それとも厚労省の辞書にはハナから「イノベーション」の文字などなかったか。
(2007年12月14日掲載)