薬事ニュース社
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>>>文化の壁、言葉の壁<<<
 「企業風土」。第一三共による買収発表会見の席上、ゼファーマの大江方二社長は、“最有力候補”と目された大正製薬ではなく、第一三共に決まったことを問われ、こう答えた。「直販(の大正製薬)と卸ルート(のゼファーマ)では、業務がまるで違う」。交渉の過程でこうした「直販」と「卸ルート」の企業文化の違いについて親会社のアステラス製薬に「要望」し、最終的にはアステラスも大正製薬ではなく、同じ「卸ルート」の第一三共がベターとの判断を下したことを示唆した。国内企業のM&Aが進まない要因のひとつに、それぞれの企業の個性とも言うべき「企業文化」を融合させることの難しさがしばしば挙げられるが、今回の顛末もそのことを裏付けるに十分だった。
 昨年末、労使間の対立が表面化したファイザーの場合も、「文化の違い」が摩擦を引き起こした一例だろう。大きな壁となったのは「言葉」という文化だ。外資系企業の内情に詳しい人の話によると、外資日本法人では、えてして「英語屋」と呼ばれる語学堪能な日本人が優遇されがちだという。日本語のできない外国人がトップであれば、英語のできる社員が重用されるのは極めて当然で、外資系企業ではよくある話だろう。しかしそれも度を超せば、現場の本当の「声」は聞こえなくなる。今回の騒動ではそれが不幸な形で露呈してしまった。「異文化」に遭遇した時、多少の摩擦は覚悟で容認、包含するスタンスに立つのか、あくまで文化的土壌の相似を重視して軋轢を回避するのか、グローバル時代にあってはこれも重要な企業戦略といえそうだ。
(2006年4月28日掲載)