薬事ニュース社
オピニオン

>>>買ったものの評価<<<
 先日、友人に見せてもらった古地図に一目惚れしてしまい、結局、自身もその地図を売っている店を紹介してもらって購入した。寝る前にこの古地図を広げて一杯ひっかけるのが最近の楽しみになっており、心から「良い買い物をした」と思っている。ただ、古地図に興味のない方から、「何て無駄なものを買ったのか」と思われることも自覚はしている。
 この業界で仕事をしていると、しばしば企業による企業の買い物、つまり企業買収の話題が出てくる。武田薬品工業によるシャイアーの買収は1年近くが経った今でもその動向が注目されているし、ごく最近ではブリストル・マイヤーズスクイブによるセルジーンの買収も関心を集めた。企業買収の場合、買う側はもちろんそれが「良い買い物」と信じて決断するわけだが、株価という形で日々評価され、思惑とは別のところで経営に影響が出てしまうのが痛いところ。経営判断としての成否の結論を得るにはそれなりの時間を要するはずなのだが。
 また、アカデミアの研究者から、企業買収を「大きすぎる買い物」と指摘する声を聞くことがある。企業買収に投じる費用のいくらかをアカデミアに回すことで多くの研究が進展し、ひいては国民や企業の利益につながると考えるからだ。結局、買ったものの評価というのは立場や時間の経過によって大きく変わる。
 さて件の古地図。実はまだ家族に買ったことを話していない。情報開示のタイミングが実に難しい。
(2019年11月29日掲載)