薬事ニュース社
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>>>緊急避妊薬の実証事業、着地点はどこに<<<
日本薬剤師会は「緊急避妊薬の適正販売に係る環境整備のための調査事業」を今年度も厚労省より委託・実施することを発表した。3年目に突入する調査事業は、前回同様に全国で300件を超える協力薬局が参加。試行的販売の状況については、既に様々なデータが収集されているという。厚労省も3年目の調査事業に際して、適正で持続可能な販売方法と販売時における留意点を探る構えをみせている。日薬によると、前回と同程度の参加薬局数とした背景には、販売プロトコールの徹底を図る考えがある。実施されているプロトコールは、購入希望者に対し研究事業への協力やアンケート記入、チェックリストによる確認などを行ったうえで、販売可否を判断する。販売に際しては同意書を交わし、薬剤師の面前で服用、服用後はアンケートを依頼するといった流れだ。日薬によると、課題意識があるのは、服用後の妊娠検査薬の使用、もしくは産婦人科医への受診の有無の確認で、薬局側が服用者に連絡を入れても返答のない場合があるという。実際に調査事業に参加している薬局に話を聞くと、大半の場合は連絡が取れると語るものの、「応対していて、『この人は連絡取れなくなるかも』と感じることはある」と打ち明ける。その一方、緊急避妊薬をめぐっては周辺環境が騒がしくなってきた。4月16日に衆議院を通過した薬機法改正案の附帯決議には、緊急避妊薬に関する内容も盛り込まれた。面前服用を始め、年齢制限、親の同意、価格などを「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」に関する「諸課題」と指摘。「若い世代の意見を代表する者を検討の場に参画せしめること」と現体制に注文を付けた。日薬はあくまでも厚労省からの委託事業であり、その結果を主体的に公表することはできない。日薬執行部も「法改正と要指導のままとする仕組みの問題など、関連する動きが目まぐるしい」との感想を漏らす。OTC化を果たした緊急避妊薬は薬局でどのように提供されるのか。いずれにせよ、いたずらに時間をかければいいという問題ではないのは確かだ。
(2025年5月9日掲載)