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>>>日本は世界で最も成長が難しい市場<<<
 武田薬品のクリストフ・ウェバー社長は、6月28日に開催した株主総会において「日本は世界で最も成長が難しい市場になった」と述べた。その原因となっているのは毎年薬価改定である。毎年薬価改定については、新薬メーカーだけでなく、ジェネリック医薬品メーカーからも、成長を阻害する制度だとして評判が悪い。そして、すでに各社の業績にもこのことが表れている。武田薬品は22年度決算で初の売上収益4兆円を達成した。しかし、成長を牽引したのは米国事業であり、日本事業は2ケタ減となった。サワイグループHDも22年度決算で初の売上収益2000億円を達成した。これも成長に寄与したのは米国事業であり、日本事業は横ばいにとどまっている。新薬メーカーと後発医薬品メーカーのリーディングカンパニーが、そろって日本事業で成長できていない。それだけ、日本は成長が難しい市場になっているのだ。
 かつて、小泉政権では毎年2200億円の社会保障費を削減し、医療崩壊につながったとまで言われた。現在は、毎年薬価改定により製薬業界が崩壊の危機に瀕していると感じている。2200億円の削減は政権交代まで撤廃されなかった。毎年薬価改定はどうなるか。救いなのは、厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」がまとめた報告書が、製薬業界からの評判がいいことだ。報告書の提言をどれだけ実現できるか。製薬業界にとって大きな分岐点に差し掛かっている。
(2023年7月14日掲載)