薬事ニュース社
オピニオン

>>>東京五輪への道<<<
 7月に投開票された東京都知事選では、ある政策に絞って、投票する候補者を選んだ。それが誰であれ、その政策を公約に掲げている候補者に1票を投じようと事前に決めていた(もちろん、物事に例外はつきものだが)。そのような意図をもって、選挙公報を隅から隅までチェックした結果、21人の立候補者のうちたったひとり、その政策を公約に掲げている候補者がいた。しかも幸いなことに、そのひとりは、一定水準の見識を保っている人物に思えたので、当初の予定通りに票を投じた。その政策とは「受動喫煙対策の推進」であり、それを公約のひとつとして挙げていた唯一の候補者とは、小池百合子氏である。
 国立がん研究センターが8月末に公表したメタアナリシス研究の結果によると、日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について、受動喫煙のある人はない人に比べ肺がんリスクが約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果とほぼ同等であることが分かった。日本人における受動喫煙の肺がんリスクは従来、個々の研究では統計学的に有意な関連が示されていなかったが、複数の結果を統合することで、リスクを上げることが「確実」であるというエビデンスを得たことになる。
 そこで、オリンピックである。リオ五輪は大いに盛り上がった。次は東京だ。個人的には、東京五輪の開催にはいまもって積極的に賛成する気にはなれない。しかしそれをとやかくしても仕方がない。やるなら、五輪開催に相応しい都市にならなければならない。08年以降の五輪開催地は夏季・冬季ともに罰則付きの「屋内完全禁煙」。ところが東京は、飲食店等関係業界等の反対もあって、罰則どころか分煙すらままならない。きっと外国人観光客は目を丸くすることだろう。どの店に入っても紫煙がもうもうと立ちこめているのだから。ここは是非とも小池知事に公約の実現を望みたい。一方、喫煙者の方には大変心苦しいのだが、諦めていただくしかない。何しろ地球の裏側(ブラジル)まで行っても「屋内完全禁煙」なのだから。
(2016年9月23日掲載)