薬事ニュース社
ケアマネ日記
>>>血の通った暖かい行政。そんなものどこに?<<<
開局薬剤師ケアマネジャー 山鳥さとよ

某月某日
早朝から油蝉が喧しく暑苦しい日だった。
店のシャッターを開けるや否やYさん(60歳台女性)が、髪を振り乱して入ってきた。父親(89歳要、介謹5)が2週間程前、脱水で病院へ運ばれ、入院直後に肺炎を併発し、やっと明日退院の予定という。この間、独身で一人娘のYさんは寝不足や心労で食事も喉を通らず、それでも仕事、家庭、病院と飛び回らずを得なかったので、介護疲れは限界のようである。このままでは退院後、共倒れの恐れがある。しかし何分急な話で、常にキャンセルは出ないかと待ち望んで多数の人が並んでいる市立の特別養護老入ホームは当てにならないだろうと、市の在宅支援係Rさんへ緊急一時保護を相談した。
案の定、「先ず、明日からのショートステイのキャンセル空きはないか、すべての特養に尋ねてほしい」。
そら任逃れのたらい回しが始まった。
冗談じゃない。役所内の窓口同士、確かめ合えば簡単に済む話じゃないか。この縦割り行政めが……。
だが泣く子と地頭には勝てぬ、利用者優先と諦め、1、2時間かけて周辺地域の特養までも徹底的に電話を入れた。そして各特養からの返事を待っているところへ、Rさんから電話で「Yさんがお宅の店まで出向いてこれたのは、まだまだ余力のある何よりの証拠。緊急一時保護はこのケースは受け付けられません」だと。人を小馬鹿にしおって。Yさんは、残った力を振り絞り、這うようにして店に辿り着いたというのに、何という冷たいいいぐさだ。選挙のとき議員達は「血の通った温かい行政を目指す!」と異口問音にいっていたのにこのざまは何だ。さらに追い討ちをかけるように、各特養から「キャンセル空きはない」と、空虚で無駄な電話が何度も何度もかかってきた。薄情な当局め! 事故でも起きたら訴えてやる。お陰で今日の午前は台なしだ。その上、折角実務実習に来ている大学院修士課程の学生さんをおっぼらかして気の毒なことをした。さぞやモチベーションが下がったことだろう。
(・・・この項、つづく)
(2007年9月28日掲載)
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