薬事ニュース社
ケアマネ日記
>>>保険医療に見放された患者さん(要介護5)。ご家族も困惑。<<<
開局薬剤師ケアマネジャー 山鳥さとよ

今日は月末が迫って何かと忙しい日なのだが、昼過ぎから店を留守にしなければならない。地域中堅のT病院のケアカンファレンス室で、ケアマネジャーとして退院間近のIさん(94歳男性、要介護5)の担当者会議を主宰する必要があるからだ。
昨日までのアポイント調整では、この日でないとIさんの在宅介護に係わる大部分の人が集まれないというのだ。主宰者が遅刻しては見っともないから、早めに店を出た。昨日までに、居宅での主介護者になる娘さん、T病院の主治医、主任看護師、ソーシャルワーカー、退院後の医療を頼んである往診医、訪問看護事業所所長、訪問入浴事業所看護師、福祉用具貸与事業所担当者、訪問介護事業所所長には予約をもらっている。各員の日程調整が大変だったが、ともかく定刻に忙しい仕事の合間を抜け出して全員が集合し、とりあえず名刺のやりとり、挨拶がそこそこに終わった。
Iさんは4カ月前、風邪をこじらせ重度の肺炎となり、酸素最大量吸入、各種抗生物質の併用で命は取り止めたが、生活意欲とADLの低下が奢しく寝たきりになってしまった。入院中、認知症が進んだが腕力だけは能力が残存しているため、飲水、食事、リハビリは全て手で払い除けるなど拒否的で、上半身の定置針はすぐ抜去してしまう。そこで止むなく手の届かない大腿静脈からIVH輸液を24時間点滴している。しかし「これ以上の医療継続は健康保険上でき兼ねる」と、家族は病院から退院を迫られているのだ。
「病院でさえ手が掛かって大変なお荷物を家に届けられては、糊口を癒すための家業もあるし、このままでは共倒れになってしまう」と家族は、特別養護老人ホームのベッドの先客が旅立たれて空くのを首を長くして待っている。その日はいつ来るかは分からないので、とりあえずは家に引き取らねばならない(この項、つづく・・・)。
(2006年6月23日掲載)
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