薬事ニュース社
ケアマネ日記



>>>選挙応援依頼、当選の暁には本当に問題を解決してくれるの?<<<

開局薬剤師ケアマネジャー 山鳥さとよ

(・・・その7からのつづき)

 2つ目。

 「元自営業の老夫婦には、無年金者が多い。若いころその日の生括に追われ、老いてからのことなんか考える余裕もなかったのだろう。関節リウマチの上に脳梗塞が併発して手足が不自由で働けなくなり、通院の費用さえも賄えないから、ケアマネに進められ止むなく生活保護を受けるようになった。耳は遠くなり視力は落ちて、電話や外出も間々ならないから、日常生活のほとんどをヘルパーに支えてもらわなければならない。食事の準備、居室の清掃、ゴミ出しなど家事の全てを2人別々のヘルパーにしてもらうわけにはいかないから、2人の利用票の予定欄には1日置きに交互にそれぞれ訪問介護を入れることになる。そして夫婦のいずれかが入院したときは、留守宅を預かる方にヘルパーの名義を移してもらい、実績で調整するしかない。

 このような例で認知症が重なると服薬管理は大変になる。薬剤師居宅療養管理指導も、そう毎日訪問というわけにはいかない。降圧剤や血糖降下剤をすでに服用したのを健忘して2度のみしてしまう。ことに危険なのはインシュリンの自己注射の2度打ちだ。『ケアマネは、介護保険の枠内で何でも賄おうとせず、インフォーマルな社会資源の全てを利用すべきだ』と役所はいいつつ、高齢者支援課から保健師が、包括支援センターから相談員が、それぞれ1カ月に1回ぐらいポコッと訪問し、思いつきをケアマネにがんがん電話してくる。

 曰く『内服薬の服薬管理だけでも危うかったこの人に、今度インシュリンの自己注射が加わった。ケアマネさん、この状態を放置して置くのは、非常に危険だ。毎日、朝夕1回ずつ訪問看護師を入れるべきだ』。

 入れたいのは百も承知だ。だが、訪問看護の保険単価は非常に高い。30分間の訪看4(343単位)を日に2回入れたら、入浴目的の通所介護が受けられなくなってしまうし、定期的な通院はおろか、月末ごろ緊急に通院しなければならなくなったときに、ヘルパーが頼めなくなってしまう。そうなったら悲劇だ。第一、同じ包括センターの別の相談員が去年夏、『訪問したとき、おむつからの尿臭がひどい。今取り入れている通所介護に入浴介助を加えるべきだ』というからそれに従ったのに、どうなっているのだ。内部でよく協識して窓口を1つにして申し入れしてほしい。毎日訪看を入れる話は、考えただけでゾーっとする。そんな無責任な綱渡りは担当ケアマネとしてサービスに取り込めない。それに生活保護担当の福祉事務所からは『区分支給限度基準をビタ一文、超えてはならぬ!』と厳命されているのだ」。

 選挙シーズン、「当選したら、介護分野で大いに働きたい。今、何か困っていることはありませんか」とやってきた候補者。困ってることを話してもポカーンとした顔をしているので、もう少し分かりやすい話を2つしてやったつもりだった。懇々と話した上で、「当選の暁には、あなたはこんな問題を解決してくれますか?」と訊ねてみた。

 「当選したら考えます」だとさ。

 のんびりしたもんだ。

(この項おわり)
(2007年7月6日掲載)

この記事に意見をおくる