08年度診療報酬改定ポイント①-がん医療-
「がん対策推進基本計画」踏まえた改定に
 08年度診療報酬改定の重点評価項目の1つに「がん医療の推進」が掲げられた。その切り口は、①放射線療法に対する評価②化学療法に対する評価③緩和ケアに対する評価④がん診療連携拠点病院の機能強化に対する評価⑤リンパ浮腫の治療に対する評価――の5点。⑤のリンパ浮腫を除いたすべての項目は、07年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」にある、▽がん診療を専門的に行う医師が専門性を発揮できる環境整備の構築▽全人的な緩和ケアの提供体制の整備等――の指摘を踏まえての改定となった。「がん医療」の改定ポイントを解説する。
■外来での放射線治療提供体制を新たに評価
 放射線療法を受けているがん患者の割合は、欧米諸国と比べて日本は低い。外来放射線療法の体制が十分に整っていないためだが、患者からすれば、外来での治療が可能にもかかわらず、外来治療を選択できないため、療養生活の質の低下につながっている側面がある。一方、疼痛緩和を目的とした放射線療法の増加が予想されており、外来での治療を希望する患者も増加すると見込まれる。
 そこで、今回改定では、患者の療養生活の質の維持向上を図るため、外来で放射線療法を受けられる体制が整備されている医療機関に対して報酬上評価。具体的に、外来患者に放射線療法を実施した場合、患者1人につき100点が算定できる「外来放射線治療加算」(1日1回)を新設する。
 また、従来の放射線治療と比較して正常臓器への副作用が少ない強度変調放射線治療(IMRT)を先進医療から保険導入する。なお、保険対象となる疾患は、原発性の頭頸部腫瘍、前立腺腫瘍、中枢神経腫瘍に限る。

■外来化学療法 レジメン管理が行われている病院・診療所は500点加算
 前出の放射線療法と同様、がん患者の化学療法についても外来でその治療が受けられる体制が整備されている医療機関を適切に評価するために、それまで1体系だった外来化学療法加算(1日につき400点)を2体系に編成。「加算1」では、施設基準を現在の基準に加え、相当の経験を有する医師、看護師または薬剤師の配置の他、化学療法のレジメン(抗がん剤、輸液、制吐剤などの支持療法薬の投与に関する時系列的な治療計画)の妥当性の検討・承認・登録する委員会の開催を求めるなど、より基準を厳格化する代わりに、報酬点数を現在より100点アップの500点とする。逆に、「加算2」では、現在と同一の施設基準を求めながら、報酬は10点ダウンの390点とする。また、この加算の評価対象を動脈注射等についても拡大する。

■がん性疼痛緩和指導管理料を新設 医療用麻薬の処方を評価
 がん患者が入院・外来から在宅まで質の高い療養生活を送ることができるよう緩和ケア体制を整備する。
まず、日本は欧米諸国と比べて十分でないとの指摘を受けている、がん性疼痛の緩和を目的とする医療用麻薬に対する知識、あるいは緩和ケアに関する基本的な知識などの普及を進める。具体的には、入院、外来、在宅を問わず、医療用麻薬を投与している患者に対して、WHO方式のがん性疼痛治療法(がんの痛みからの解放‐WHO方式がんの疼痛治療法‐第2版)に従って、副作用対策や疼痛時の対応を含めた計画的な治療管理や当該薬剤の効果等に関する説明を含めた療養上必要な指導を継続的に行い、麻薬を処方した場合に算定できる「がん性疼痛緩和管理指導料」100点を新設する。
 次に、緩和ケアの質の向上を図るため、緩和ケアチームを報酬上評価している「緩和ケア診療加算」(1日250点)について、それまで算定要件になかった「専任の薬剤師の配置」を追加し、点数を300点に引き上げる。一方で、がん患者の地域での療養生活の質の向上を図るため、入院医療に専従とされている医師が外来診療に当たることができるよう、その勤務形態の要件を緩和する。
 さらに介護老人保健施設や療養病床においても、保険医療機関の医師が医療用麻薬を処方しても算定できるようにする(現在は処方しても算定できない)とともに、在宅での疼痛緩和を推進するため、医師の処方せんに基づき保険薬局で交付可能な注射薬及び特定保険医療材料を追加する。
 ○追加される薬剤=グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩基塩配合剤、クエン酸フェンタニル製剤、複方オキシコドン製剤、ベタメタゾンリン酸エステルナトリム製剤、リン酸デキサメタゾンナトリウム製剤、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム製剤、プロトンポンプ阻害剤、H2遮断剤、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム製剤、トラネキサム酸製剤、フルルビプロフェンアキセチル製剤、メトクロプラミド製剤、プロクロルペラジン製剤、臭化ブチルスコポラミン製剤。
 ○追加される医療材料=携帯型バルーン式ディスポーザブル連続注入器。

■がん診療連携拠点病院加算は倍額の400点に 今後の機能強化を配慮
 がん診療連携拠点病院は、がん医療の地域間格差をなくし、質の高いがん医療を提供するため、地域におけるがん診療連携を推進するための中核となる病院。厚生労働省が06年から専門的な医師が配置されているなど一定の要件をクリアした病院を「がん診療連携拠点病院」として指定しており、07年1月末現在で47都道府県286病院に拡大している。
 今回の改定では、診療連携拠点病院が、がん診療において果たしている役割や今後の機能強化に鑑み、当該病院に対して評価している「がん診療連携拠点病院加算」(入院初日200点)の点数をアップし、倍額の400点とする。

■リンパ浮腫治療を保険適用化、浮腫治療着衣も
リンパ浮腫は主として子宮がん、前立腺がん等における広範囲のリンパ節郭清を受けた患者において、リンパ還流の障害が原因として起こり、術後3年までに約28%に発症するとされている。しかも一旦発生してしまうと完治が難しいとされるだけに、術後の適切な時期から、患者自身が行うリンパドレナージ等による発生の抑制が求められる。
 そこで、今回の改定では、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、乳腺がん(腋窩リンパ節郭清術を伴うものに限る)の術後にしばしば発症する四肢のリンパ浮腫について、術後適切な時期から、医師または医師の指導に基づき看護師、理学療法士が患者に防止策の指導を行った場合に算定できる「リンパ浮腫指導管理料」100点(入院中1回)を新設。リンパ浮腫治療を保険適用化する。
 またこれに併せて、リンパ浮腫の重篤化予防を目的とした弾性着衣(ストッキンング等)の費用を療養費払い(一旦自分で全額を支払って、後で健康組合に申請して返還してもらう方法)の対象とする。

「08年度診療報酬改定ポイント②-脳卒中対策-」に続く。
(薬事ニュース 2008年3月21日号掲載)