胃腸薬市場の今
新製品が市場を活性化
減少傾向に歯止め!?
 市場調査会社の富士経済によると、総合胃腸薬、健胃・消化薬、制酸薬、鎮痛鎮痙胃腸薬、胃腸内服液の5薬効を対象とした胃腸薬市場の2005年度実績は、前年比微増の469億円、06年度は470億円が見込まれるという。整腸薬、止しゃ瀉薬、便秘薬、駆虫薬の4薬効を対象とした消化器官用薬の05年度の売上高は261億円。06年度は266億円と予測している。
 整腸薬は、乳酸菌の機能研究が進み、乳酸菌を配合した新製品などが好調で、医薬部外品を含めた売上高は04年度から増加。05年度は90億円、06年度は98億円が見込まれるという。
 消化器薬市場は、景気動向に影響を受けやすいことや、プライベートブランドの成長などの影響を受け、市場の縮小が続いてきた。しかし、健胃薬や整腸薬の医薬部外品への移行など市場環境の変化があった04年度を底に回復の兆しが見え始めた。
 微増の背景について富士経済は、H2ブロッカーの「ガスター10」(ゼファーマ)が伸長したことや、総合胃腸薬や制酸薬では、上位企業がテレビなどでの広告宣伝を積極的に展開していることを指摘しているが、大腸や胃の粘膜などをターゲットにした新たなカテゴリーを創出する新製品により市場が活気づいてきたことも要因の一つだ。
 患者は胃腸症状について充分に説明できないことも多い。ストレスの増加や食生活の欧米化に伴い、胃の痛みや下痢、胃のもたれや胸やけなどの胃腸症状は、最も身近な身体のトラブルのひとつだが、患者それぞれ、症状、要因はさまざまなうえ、個人のニーズも多様化している。小売り関係者は「店頭で専門性を発揮できていれば患者に選ばれる」と店頭対応の重要性を指摘する。消化器薬市場は販売制度改正でも問われている専門性の発揮が求められている典型的な領域といえる。

薬剤師の医療薬学に基づいたより的確なアドバイスのために
神奈川県開局 大田和馬
 【これからの薬剤師】
 これからの一般用医薬品(OTC)販売にかかる薬剤師の役割は、これまで以上に高度な質、深い取り組みが求められるだろう。その背景には、薬学教育6年制や改正薬事法によるOTCのリスク分類といった制度変更がある。医療用医薬品はもとより、OTC購入者へのこれまで以上の充実した情報提供や、注意喚起、受診勧奨など、薬剤師としての医療薬学知識に基づいた的確なアドバイスが、義務、努力義務を含め求められ、より重要になってくる。
 しかし薬剤師の中には、OTCに関する知識、情報について十分な対応ができるとはいいかねるケースもまま見受けられる。僭越ながら、そのような状況では、店頭を訪れた顧客にふさわしい応対ができるとは言いがたい。そこで、ここに示す表【紙面参照】を基礎知識として把握することで、プロフェッショナルとしての的確な応対を行うための一助になりうるのではないか、との考えから、マトリックスとしてまとめてみた。

またここではQ&A形式で店頭対応シミュレーションを示す。分類表をもとに、どうした時に、どういう注意点やアドバイスが的確か、再確認していただきたい。
Q:「高血圧なのですが胃腸薬なら何でも大丈夫ですよね?」
A:
ロートエキスは副交感神経遮断の作用があり、心拍数の上昇、眼圧の上昇、膀胱の緊張低下を起こすことがある。従って心臓病・緑内障・排尿困難の方は注意が必要。
(グリチルリチン酸類、スコポラミン類も同様)
A:胃酸を中和する成分、制酸剤として炭酸水素ナトリウムを含むものがある。ナトリウムは大量あるいは連用することで血圧をあげることになる。中には1日の服用量で1.6gの塩分を取ったと同じことになるものもある。

Q:「腎臓がよくなく、胃腸薬を買う時は薬剤師に相談しろと医師から言われているけど?」
A:
制酸成分のナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の無機化合物は腎臓が健全であればイオン化された後、排出される。腎機能障害があると排泄が遅れ、長期服用ではむくみ、悪心、食欲不振などの諸症状がでることがある。特にアルミニウムを含むもの(合成ヒドロタルサイド、スクラルファートなど)は腎でなかなか排泄されず体内に残る。従って透析をしている人には禁忌である。現時点でアルツハイマーとアルミニウムの関係はグレーと言わざるを得ないところも十分留意すべき。

Q:「胃腸薬なのに添付文書に下痢・便秘を起こすことがあると書いてあるけど?」
A:
制酸剤のマグネシウムは腸内で水分を保持するので、高じると下痢に。アルミニウムはたんぱく質と結合し収斂作用を示し便秘になることあり。カルシウムは腸の運動を抑制するので便秘を起こすことあり。また、ロートエキスなど副交感神経遮断薬も便秘を起こすことあり。

Q:この商品群の中で3歳児でも使用してよいものは?
A:
新三共胃腸薬のみ。

Q:OTCとその医療用医薬品を結べ
A:
『新中外胃腸薬』『イノセアプラス』→アルサルミン、『田辺胃腸薬調律』-セレキノン、『センロック』→ノイエル、『サクロン』→ストロカイン、『ガストール』→ガストロゼピン、『セルベール』→セルベックス

医薬品と生活習慣でスッキリ
胃腸のトラブルに負けない
 ストレスの増加や食生活の欧米化に伴い、胃のもたれや胸やけ、胃の痛みや下痢、便秘は、かぜや肉体疲労と並んで最も身近な体のトラブルとなっている。症状が出た場合はOTCを服用するか、医療機関を受診した方が良いが、今号では胃腸トラブルの中でも下痢・便秘にならないよう日常生活での注意事項――を紹介する。

冬に流行するノロウィルスに注意
 下痢は食べすぎや飲みすぎで胃に負担をかけたり、お腹を冷やしすぎると起きる。また、過敏性腸症候群のようにストレスによって起きる下痢も最近は増えている。食べ物についた細菌やかぜのウイルスによっても引き起こされることもあり、特に冬場に要注意なのがノロウィルスだ。
 ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生しているが、特に冬季に流行する。ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こす。健康な人は軽症で回復するが、子どもや高齢者などでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがある。ノロウイルスの治療は対症療法に限られることから、予防の徹底が重要だ。予防には、①食事の前やトイレの後などには、必ず石鹸を用いて手を洗う②下痢やおう吐等の症状がある人は、食品を直接取り扱う作業をしないようにする③食品はしっかり加熱する④胃腸炎患者に接する人は、患者のふん便や吐ぶつを適切に処理し、感染を広げないようにする――など。

便秘の原因の多くは生活習慣
 便秘の大半は生活習慣に起因する。例えば朝食を抜くと、胃・大腸反射、直腸・結腸反射が機能せず、便意を起こす自律神経の働きが低下する。また、食物繊維が不足したり、やわらか過ぎるものばかり食べていると、そのほとんどが胃や小腸で消化され、便のもとができないことがある。水分不足も便秘の原因だ。トイレを我慢するのも良くない。トイレを我慢すると、直腸・結腸反射が消え手しまうことに加え、腹筋が弱いと便を押し出す力が弱まり、便秘になるケースがある。このほか、旅行や転居、進学、職場の異動などで環境が変わった場合や、加齢によって腸のぜん動運動が弱まることでも便秘になることがある。便秘になると、おなかの張りから頭痛、イライラ、肌荒れなど身体にいろいろな症状があらわれることがある。こうした症状も、便秘を解消することで改善できるかもしれない。

日常生活で気をつけるポイント
 便秘を予防するには、①1日3回、バランスのよい食事をとる。特に食物繊維や乳酸菌、ビタミンを摂取する②朝食後、ゆっくりトイレに入る時間をつくる③夜ふかしをしない④運動をする⑤ストレスをためない⑥排便の習慣をつける――など。一見、夜更かしは便秘とは関係なさそうだが、腸は自律神経など神経系統に強く影響される。夜ふかしによる睡眠不足は、神経に負担を与え、腸のはたらきを悪くしてしまう。ただ、なかには腸の病気がもとで便秘になっているケースもある。
(薬事ニュース 2007年1月19日号掲載)