注目市場 女性のニーズを探れ
 景気の低迷の影響もあり、大衆薬市場は伸び悩んでいる。そんな中、新たに女性市場の獲得を狙った動きも活発化してきた。薬局・薬店、ドラッグストアを訪れる生活者は大半が女性であることから、女性向け製品の開発に力を入れるのは自然な流れと言える。重要なのは、女性のニーズを掴むことだ。女性の社会進出に伴い、多様化する女性のニーズを掘り起こし、獲得するため、女性をターゲットに据えて商品開発やマーケティングを展開している企業をレポートする。
エーザイ--
アクティブな女性をメインターゲットに
組織改変でニーズ掴みやすく
 2011年度を最終年度とする中期経営計画がスタートしたエーザイは、OTC事業で新たな試みを始めている。従来、性別、職業、年齢階層で消費者を分類し、ニーズを分析していたのを、生活者の行動様式に着目してニーズを分析するよう改めた。生活者の属性ではなく特性を重視する考え方だ。具体的には、メインターゲットとして“女性、とくに友人との繋がりなど社会との関係性を大切にする人”を規定。つまり、仕事や趣味、人間関係に積極的でアクティブな女性で、代表的なタイプは、経済的にもゆとりのでてきた30歳前後の活動的なOLということになるだろう。ただ、年齢で規定しているわけではないので、他の年齢層や職業でもメインターゲットになりうる。
チョコラBBプラス  顧客のターゲットを変更した背景には、ニーズの多様化がある。一般的に、美や健康に対する意識の高まりは指摘されているが、女性の社会進出やライフスタイルの多様化に伴い、女性のニーズも多様化した。同じ属性でも、流行や新製品など新しい出来事に敏感で積極的に取り入れるタイプとそうでないタイプがいるように、ニーズや消費行動が細分化しており、従来の分類ではニーズを捉えきれないケースが出てきていた。
 戦略の変更に伴い、組織も改変。OTC事業を担当する薬粧事業部に、調査室、企画室、開発室の3室体制で構成されるブランドマネジメント部を新設した。ブランドマネジメント部は、顧客や市場の情報を一元化し、製品開発からマーケティングまでを有機的に結びつけ、顧客へのきめ細かなコミュニケーションを展開する。調査室は女性中心のメンバーで、上市予定の新製品の顧客満足度や、メインターゲットとして位置づけた“女性、とくに友人との繋がりなど社会との関係性を大切にする人”をパネラーとして継続的に情報収集を行い、製品開発に活かしていく。
 エーザイでは今後、スイッチOTCも含めて新規市場を創出できる製品や、主力の「チョコラ」ブランドを活かしながら、メインターゲットである女性の「キレイ・元気」に貢献する新製品を開発する。新しい方針に則った新製品の登場は早くても07年度以降となりそうだ。開発の方向性としては、携帯性に優れた剤形や水なしでも服用できるタイプ、長時間持続型などが考えられるだろう。このほか既存品も新た戦略転換に伴い、情報提供のあり方など変更する。
エスエス製薬--
インナー・ビューティー&ヘルス
モデルルームで売り場提案も
 羽鳥成一郎社長が昨年の就任時に掲げたコンセプトは、「インナー・ビューティー&ヘルス」。これは、女性の美と健康に内面からアプローチするということで、こうしたコンセプトに基づいた新製品第一号が今年3月に発売した「ハイチオールCプルミエール」(医薬品)と「ハイチオールCプルミエール薬用ホワイトスポッツ」(医薬部外品)だ。 この2品は、同社の主力製品のシミ・そばかすの治療薬「ハイチオールC」の上位品として位置づけられている。パッケージもシルバーを基調に高級感を演出している。「ハイチオールCプルミエール」は、製剤技術を駆使することで小粒化に成功。その小さな粒に「ハイチオールC」の1.5倍のL-システインを凝縮し、1回の錠数を変えずに1日2回の服用を実現した。また、「ハイチオールCプルミエール薬用ホワイトスポッツ」は、外側からぬってシミ・そばかすにアプローチする医薬部外品の薬用クリーム。身体の内と外からシミ・そばかすを防ぐ。
ホヘワイトスポッツ  エスエス製薬の事業展開の方向性は、①治療薬、保健薬②予防薬、生活改善薬③インナー・ビューティー&ヘルス④ビューティーエイジング――の4つ。親会社のベーリンガーインゲルハイムと連携し、スイッチOTCの開発を進めるほか、睡眠改善薬「ドリエル」で実績のある生活改善薬の分野での開発にも力を入れる。  20年以上化粧品畑を歩んできた羽鳥社長は、「すべての女性の生き方にどのような貢献ができるかを訴えていきたい」と言う。その考えにのっとり、新製品だけではなく、既存品も女性をターゲットにアプローチを変えている。その好例が解熱鎮痛剤「イブA」だ。ユニセックスの製品との位置づけから、訴求対象を女性へと明確化したことで売上高は伸びているという。
 また、変化は組織面にも現れている。女性のニーズを汲み取るために、マーケティング組織に女性スタッフを増員し、開発会議からプロモーションまで女性の声を反映させるようにしている。
 本社ビル内1階に開設したドラッグストアモデルルームは、「インナービューティーメーカー」のイメージを具体化したもの。奥に広がるかぜ薬や胃腸薬などの棚とは別に、入り口付近には、インナービューティー関連の棚が並び、消費者はカウンセラーと相談しながら製品を選べるようになっている。入り口に最も近い棚が、血行の促進や肌の潤いに関する棚で「あたたか・なめらか美肌コーナー」。その隣は「肌あれ・にきびのない美肌コーナー」。さらにその隣は「しみ・そばかすのない美肌コーナー」となっている。製品だけでなく、店頭のレイアウトも含めて、女性ニーズ獲得に向けた提案を行っている。 プルミエール
カネボウ薬品--
女性の悩みに漢方で訴求
3事業のコラボでシナジーを
 カネボウ薬品は、ホームプロダクツ・食品との連携によるシナジー効果を発揮させた新商品開発を積極的に推進している。その第1弾がビタミンE、Cにカネボウが美白を目的に開発した素材「B(ビー)-Mixia(ミクシア)」を配合した医薬品「アプレアEC」(薬品とホームプロダクツのシナジー)、ならびに和漢植物エキスを配合した基礎化粧品シリーズ「和漢花」(ホームプロダクツと薬品のシナジー)だ。
アプレア  「アプレアEC」に配合されている「B-Mixia」は、漢方薬が種々の原料生薬を組み合わせて効果を表すことから、ビタミン類についてもその「組み合わせの妙」を探求。特定のビタミンB類を一定の比率で組み合わせることで色素沈着防止効果を示す「B-Mixia」を発見した。「アプレア」ブランドでは、薬品部門とホームプロダクツ部門の協力で医薬部外品の「アプレア薬用美白美容液」も発売している。
ストレスなどによって、メラニン生成に関与するホルモンが増加することにより、皮膚のメラニンが過剰につくられることもしみの原因の1つだ。このメラニン生成の調整に関与するビタミンB群に、ビタミンC、グリチルリチン酸ジカリウムを配合し、メラニンの生成を抑えるのが、「アプレア」ブランドのもうひとつの特徴だ。
 医薬品事業とともに化粧品事業も有名で、女性向けの製品が多いカネボウグループ。カネボウ薬品の女性が中心ユーザーとなっている製品の代表的なものは、「アプレア」、便秘薬「コッコアポ」、わきの下の匂いを抑える「H・ミッテルクリーム」(医薬部外品)で、これらで売上高の2~3割を占める。
 カネボウ薬品のマーケティング部の松本裕美係長は、「女性の社会進出に伴い、女性の悩みは多様化している。そのニーズに応えて行きたい。当社は、ホームプロダクツ、フーズと連携して、さまざまな製品を提案していく」と語る。
 カネボウは、グループ全体のブランド戦略の再構築を図るブランディング・マーケティング部を新設するとともに、3 事業の商品開発・マーケティング部、お客さま相談室が同じフロアに集結している。薬品・ホームプロダクツ・食品のスタッフが同じフロアで日常的に意見交換を行うことから、シナジー効果を発揮する製品の開発、マーケティングに結びつけるのが狙いだ。マーケティングでは、「H・ミッテルクリーム」にホームプロダクツの製品であるボディシャンプーの「ナイーブ」のサンプルをおまけとしてつけるなど、これまでにはなかった取り組みも行われている。
 松本係長は今後の製品開発について、漢方薬は生理不順など西洋薬にはない適応を持つものがあることから、「(漢方薬の効能は)まだまだ市場獲得できていない。(OTC漢方薬のトップメーカーであり3事業が中核の)カネボウならではの他社と違うアプローチを行う」と語る。
ロート製薬--
機能性化粧品で存在感
商品企画には女性スタッフが多数
 機能性化粧品「オバジ」、敏感肌用スキンケア化粧品「セバメド」、サプリメントのブランド「美活工房」、医薬部外品「お肌の集中対策」シリーズなど、女性の美をサポートする製品群を持つロート製薬。今年は、紫外線の影響として女性が最も気にするシミや肌ダメージなどの光老化に着目し、強力な紫外線カット力で紫外線を「シミにしない」という発想から生まれた新しい日焼け止め「Orezo(オレゾ)」シリーズを新発売した。「オレゾ」についてマーケティング本部商品企画部の宮川亮部長は、「10年来、日焼け止めに携わってきたことで、マーケティングやのノウハウが蓄積されている。そこに独自の技術を用いて高付加価値製品市場に参入する」と意気込みを語る。ZERO(ゼロ)をもじって名づけられた「オレゾ」は、同社の他の製品同様パッケージで製品の機能を伝えるよう工夫がなされている。日焼け、紫外線をイメージさせる黒字にゼロをイメージさせる輪を描かれており、パッケージの表現戦略を重視している同社らしいパッケージだ。
オレゾ  ロート製薬は、OTC専業メーカーとして培ってきたノウハウを活かし、同じ有効成分でも、より強く、より長く効果を発揮する製剤を開発、OTCに限らず、化粧品や機能性食品などの分野で新製品を積極的に上市している。「ブランドイメージは、機能的な要素と(デザインがよいなどの)情緒的な要素から成り立っているが、当社では医薬品企業として機能的な要素を重視している」と説明する。
なかでも女性向け製品の売上高は、全体の7割程度を占めている。女性のニーズを集約して製品開発に結びつけるため、商品企画には若い女性を多く配置。また、お客様サポートデスクに寄せられる情報や、ホームページなどを通じて集めた消費者からの情報を、社内の情報ネットワークを通じて、各部署が共有する仕組みを構築している。
 今年の6月からは、技術を支える研究所(京都府)が新たに稼動を開始する。この研究所では、新素材・新製剤技術の研究を行い、ベンチャー企業や国内外の研究者との共同開発を積極的に推進する。機能性化粧品や食品分野、予防・再生医療の開発強化を図っていくのが狙い。機能性化粧品では自社のブランド「オバジ」の製品開発を行う予定だ。「オバジ」は、アメリカでは一般消費者向け製品ではなく、ドクターズコスメ――治療院で施術――だったのを、一般消費者向け製品として日本で上市した。導入に当たっては、アレルギーが起きない、使用しやすい製剤にするために改良を加えている。宮川部長は、今後も「身体の内側からはサプリメント、外側からは機能性化粧品から外用剤まで幅を持たせて展開する」と語る。
(薬事ニュース 2006年5月26日号掲載)