来年度「がん専門薬剤師」が本格的スタート
薬剤師も2極化の時代に 
「専門薬剤師制度」発足が意図するもの
  来年度より「がん専門薬剤師」の認定制度が本格的にスタートする。運営主体は日本病院薬剤師会(日病薬)。日病薬として初の取り組みとなる“専門薬剤師”だが、厚生労働省としても来年度予算として概算要求しており、国としてもバックアップしていく方針だ。制度発足の背景として、抗がん剤の誤投与といった医療事故などがあげられるが、医薬分業の進展で、今後ますます病院薬剤師の専門性が問われてくるのは必至。今回の制度発足は、こうした流れがうまくマッチした結果とも言えなくはない。日病薬として制度をどう位置付けていこうとしているのか。企業の反応はどうか。今後を見据えた上での専門薬剤師制度を追う。
来年度「がん専門薬剤師」が本格的スタート
 来年度より「がん専門薬剤師」の認定制度が本格的にスタートする(下図参照)。厚労省は06年度予算の概算要求に、「専門薬剤師研修事業費」として約1億1500万円を新規計上。がん薬物療法等の専門分野の薬剤師を養成するため、勤務薬剤師を対象に研修を行っていくとしており、06年度からの5カ年計画で開始する。日病薬が運営主体となり、国立がんセンターなど10施設ほどを選定し、研修を実施。年間300人程度、将来的には約1500人の専門薬剤師を養成していく方針だ。今年度は過渡的措置として、申請資格を有している人を対象に、認定審査委員会等が審査、認められれば認定薬剤師として委嘱する形式をとっている。なお、現在の所「20数名」(日病薬)に暫定的な認定証を出すとのことだ。
制度発足の背景
 「がん専門薬剤師」制度発足の背景には、もちろん高度化する「がん薬物療法」への対応があげられるが、他にも①安全対策②外来のがん化学療法患者の増加――などが存在する。抗がん剤に関連する医療事故のニュース、またそこにおける薬剤師のチェック機能の不在などが明らかになっており、医療事故を未然に防ぐという意味で、薬剤師の役割がクローズアップされた。また最近では、抗がん剤治療において、入院ではなく通院しながら治療を行うケースが増えており、これも制度発足の背景のひとつとしてあげられる。一方、「あまり関係ない」(日病薬・関口久紀専務理事)とされるが、02年の診療報酬改訂で抗がん剤の外来化学療法に加算が付けられ、これが専門薬剤師の育成機運に繋がったとする関係者の見方もある。
「エイズ」「栄養」は診療報酬加算要求も
 現在、日病薬では、がん以外にも「感染制御専門薬剤師」「精神科専門薬剤師」「エイズ専門薬剤師」の認定制度に向けて取り組んでおり、感染制御に関しては今年度末までに試験実施を行う予定。また、「栄養療法(支援)専門薬剤師」についても、日病薬が構成員として参加する「日本栄養療法推進協議会」において、現在検討している状況にある。関口氏は、飲み方が難しく、患者への服薬指導が重要となってくる「エイズ専門薬剤師」、行政などが力を入れる糖尿病対策にも関連しうる「栄養療法(支援)専門薬剤師」については、日病薬として「診療報酬加算の評価も考えている」としている。  なお、認定にあたっては、混乱を避け、日薬・日病薬などが創設メンバーとなり昨年発足した「薬剤師認定制度認証機構」のもと、統一した専門薬剤師制度を創っていく予定だ。
企業の反応は良好
 一方、企業はというと、「がん専門薬剤師」発足を概ね快く思っている様子。ある企業関係者は、経口の抗がん剤は、副作用が強く、一度出てしまうと、休薬・治療自体の建て直しが必要になってくると説明。一般に、患者は薬に対する不満を医師には言わず、薬局窓口で漏らすケースが多々あるため、「早い段階でチェックが出来れば、重大な副作用は回避できる」と述べる。また、抗がん剤の誤投与による事故を防ぐために、看護師が病棟で抗がん剤の調整を行うのではなく、薬剤師が行って欲しいといった声もあがってくる。とはいっても、最終的な処方を決めるのは医師。企業におけるがん専門薬剤師の位置づけについて聞いてみると、処方という観点ではなく、「安全に(薬が)使用される」という意味で期待は大きいと言えそうだ。
薬剤師も2極化の時代に
 現在、病院薬剤師においては、医薬分業や経営の効率化などから、病棟業務における点数などは減らされる傾向にある。そういった中、新しく始まる専門薬剤師制度は、今後を見据えた上で重要になってくると言える。関口氏は、今後、薬剤師においても2極化が進んでいくとの見方。病院などに限って言えば、「薬剤師は過剰になる」と指摘。米国では薬剤師の助手として調剤などの補助を行う「テクニシャン」と、より高度な薬剤知識が必要とされる業務、例えば処方せんの入口から出口までのチェックや院内経営などに携わる「薬剤師」に分かれており、「日本もそういった方向に進むのでは」とした。  来年4月からいよいよ始まる薬学6年制。いずれにせよ、今後ますます薬剤師の専門性が求められてくることは言うまでもない。制度はつくられた。次は、薬剤師の「資質」が問われる番である。
(薬事ニュース 2005年11月25日号掲載)