オピニオン
日常の中の漂流旅行
魔法とリズムと恋。音楽が鳴ったときにほとばしる衝動は、そんな感覚に集約されるのかもしれない。5月15日に2ndアルバム「HURRICANE UPSETTER」をリリースしたMagic,Drums&Loveというバンド名のことだ。
彼らは下北沢などを中心にライブ活動を続ける4ピース。前身バンドでは、ロックンロールを体験した時の喜びをストレートに解き放つ音楽性で、楽器は下手だったが、余りあるポップネスと振り切ったセンスに光るものがあった。
Magic,Drums&Loveに変わって2作目となる今作では、そのセンスを存分に発揮。ニューミュージックのような都会的バラードでアルバムの幕を開けたかと思うと、ディスコティックなダンスナンバーが飛び出し、カリブの海を思わせるカリプソや50年代のドゥーワップ、ムーディなアーバンポップなど、国や時代を軽やかに超えるバラエティに富んだ曲の数々を提示してみせた。一方で、それぞれの時代、国の音楽をそのままなぞるだけではなく、ロックンロールを始め、彼らが現在に至るまで影響を受けてきたJ-popやアイドルソングのエッセンスまでも咀嚼。音楽に対するプリミティブな衝動と洗練されたセンスの高さが鮮やかに詰まっていて、思わずドキッとさせられる。まさしく、魔法とリズムと恋の衝動が滾る、瑞々しさが詰まった作品だ。
Drums,Vocalを担当するYURINA da GOLD DIGGERは「色んな国に漂流しながら航海している感じのコンセプチュアルな2ndアルバムに仕上がりました」とコメント。このアルバムを聴いて私は、日常を超えていつでも世界を漂流できる。
(2019年6月7日掲載)
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