オピニオン

広がりつつある“減酒”

 寒さが強まり、酒席が増える季節となった。年齢のこともあり「飲みすぎてアルコール依存症にならないように気をつけないと」との考えが頭をよぎる。
 そういえば、アルコール依存症の治療は、これまでは一切のアルコール摂取を禁止する“断酒”一辺倒であったが、最近では、新たな選択肢として“減酒”という概念が広がりつつあるという。神奈川県にある久里浜医療センターでは、我が国初の減酒外来を設置し、その効果に対する検証が始まった。また、大塚製薬からは減酒を効能とする国内初の薬剤の承認申請がこのほど行われた。環境整備が着々と進んでいるようだ。
 もちろん重度の患者は別だが、減酒であれば、患者にとっての心的負担が少なく、これまでドロップアウトしてしまっていた患者を治療に向かわせることが出来るのではないかとの期待がある。また、アルコール依存症に至っていないが、飲酒に関して何らかの問題を感じている人が、減酒を通じて依存症になることを防ぐという狙いもある。
 となると、減酒が定着するためには、1人1人がアルコール依存症と減酒の効能について認識する必要があるが、そういった機会は意外と少ない。二日酔いになった時は減酒の必要性を強く感じるのだが、その決意が継続しないことは多くの人が経験しているのではないか。疾患教育や健康診断などでアルコール依存症に対する項目を強化するなど、国を挙げてのもう一押し、二押しが必要だろう。



(2017年11月10日掲載)



前後のオピニオン

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(2017年11月17日掲載)
◆広がりつつある“減酒”
(2017年11月10日掲載)
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(2017年11月3日掲載)